第5中足骨近位部の領域2(骨幹端-骨幹接合部)をとおる骨折をJones骨折 と呼び、治癒の可能性と治療戦略は領域によって異なる[1] 。転位のない骨折は膝下ギプスまたは装具で早期から全荷重の機能的治療が可能だが、遷延癒合・偽関節の可能性に留意し、アスリートには初期から外科的治療を提案する場合がある [1] 。
重症度・疫学
年間発生件数(日本): 第5中足骨骨折全体の推定年間40,000〜60,000件のうちJones骨折(Zone 2)は約10〜15%
好発: プロスポーツ選手に多い[5]
受傷機転: 踵が挙上した状態で内反した足部に体重がかかり、中足骨基部の前方に折り曲げる力が加わって生じる介達骨折[2]
Zone分類(第5中足骨近位部の3領域)との関係:
Zone 1(結節部):結節部の裂離骨折(tuberosity avulsion fracture)[3]
Zone 2(Jones骨折本体):骨幹端-骨幹接合部。治癒の可能性と治療戦略は領域によって異なる [1]
Zone 3(近位骨幹部疲労骨折):Jones骨折と混同されやすいが、予後・治療が異なる[3]
注意すべき合併症
遷延癒合・偽関節(転位のない骨折を早期全荷重の機能的治療で扱う場合も、その可能性に留意する)[1]
再骨折(急性Jones骨折を手術固定したNFL選手でも12.0%が再骨折し、再手術を要した)[5]
硬化変化・骨髄腔消失(繰り返す疲労骨折・慢性型Jones骨折でX線上の髄腔閉塞所見を認める)
腓骨短筋腱損傷(基部付近の裂離要素を伴う場合:5〜10%)
足背皮神経(浅腓骨神経終枝)の損傷(手術アプローチ・スクリュー刺入時の注意点)
スクリュー抜去困難・hardware prominence(太径スクリュー使用時に皮膚刺激をきたすことがある)
治療方針
⚠️ 保存療法
→ 対象:転位のない骨折(アスリートには初期から手術を提案する場合がある)[1] → 膝下ギプスまたは装具を装着し、早期から全荷重で機能的治療を行う[1] → 保存療法中も遷延癒合・偽関節の可能性に留意する[1] → 転位のない骨折は、膝下ギプスまたは装具を装着して早期から全荷重での機能的治療が可能[1] → 治療の指針には議論があり、しばしば個別化を要する[3]
🔷 手術適応基準・術式選択
ℹ アスリート(初期から手術を提案する場合がある)[1] ℹ 遷延癒合・偽関節例(通常は手術的治療を要する)[3] ℹ X線上の骨硬化・骨髄腔閉塞を伴う慢性型・疲労骨折型 ℹ 固定後の再骨折例(NFL選手の手術例では再骨折した12.0%が再手術を要した)[5] ℹ 術式の第一選択:第5中足骨結節部から骨折部を横切って髄腔に適切なサイズのスクリューを挿入する髄内スクリュー固定[1] ℹ 遷延癒合・偽関節例:骨移植(自家腸骨海綿骨)併用 ± プレート固定も考慮 ℹ スクリューサイズ:アスリートのJones骨折に対する4.5mmカニュレイテッドステンレススクリュー固定で、臨床的骨癒合100%・X線上もほぼ100%の癒合が得られた[6]
治療選択アルゴリズム
診断・評価
足外側の疼痛と骨折部に限局した腫脹を認める。近位骨幹部の疲労骨折はJones骨折と混同されやすく、予後・治療が異なるため鑑別が重要 [3] 。
X線正面像・斜位像(斜め45°): 斜位像が骨折線の描出に最も有用。骨折部のX線所見を分類する:①骨折線のみ(急性型)、②骨折線+皮質肥厚・硬化(慢性型)、③骨髄腔閉塞(高度慢性型)。Quill分類(Grade I〜III) による術前評価が手術プランに影響する
CT: 骨折線の走行や骨髄腔の状態の確認に用いる
術前X線斜位像・正面像 — Zone 2 骨折線・皮質反応・骨髄腔評価
CT矢状断・軸位断 — 骨折線走行・皮質反応・骨髄腔の状態評価
✅ 許容される整復
✓ 骨折線の解剖学的整復(転位 ≦1mm) ✓ スクリューが第5中足骨結節部から骨折部を横切って髄腔内に設置されている[1] ✓ ねじ山が骨折部を越え、骨内膜面に適切に噛み込んでいる[1] ✓ 骨折部に圧迫(lag screw効果)が得られている
❌ 許容されない変形
✕ 骨折部の有意な転位(>2mm)— 骨癒合不全・疼痛残存の主因 ✕ スクリューの穿孔(骨皮質を破って関節内や外に出ている) ✕ スクリューが偏心挿入(髄腔中央からの著明な逸脱)— 固定力低下・破損リスク ✕ 慢性型骨折での骨移植省略(骨硬化・髄腔閉塞例での骨移植なし固定は偽関節の主因)
手術手技
体位
仰臥位: 患側股関節を内旋した仰臥位。患側の足部が手術野中央に来るよう手術台端部に足を置く。足関節・足部を透視で確認できる位置に調整。大腿部または下腿近位部に止血帯を設置(適宜)。下肢を斜めに傾けることで足外側面へのアクセスを改善。小腿下にロールを置いて足関節を軽度底屈・内反位に保持すると骨折部の展開が容易になる
体位・透視設定 — 仰臥位・足外側アクセス・C-arm配置・止血帯設置
経皮的髄内スクリュー固定(第一選択術式)
スクリュー刺入点の決定(Step 1): 第5中足骨結節部から刺入する。挿入点は内側の高い位置にあり、透視下で確認する[1]
ガイドワイヤー挿入(Step 2): 透視下でガイドワイヤーを髄腔に挿入し、骨折部を横切る経路とする[1]
ドリリング(Step 3): ガイドワイヤー挿入後、ドリルサイズを徐々に大きくしてリーミングする[1]
骨折部への補填: NFL選手の急性Jones骨折固定では、多くの例で髄内スクリューに加えて腸骨稜骨髄吸引液と脱灰骨基質を骨折部に注入した[5]
スクリュー固定(Step 4): 適切なサイズのスクリューを、ねじ山が骨折部を越えるように挿入し、骨内膜面にねじ山を適切に噛み込ませる[1]
最終確認: スクリューのねじ山が骨折部位を通過し、骨内膜表面に適切に噛みこんでいることを確認[1]
⚠️ ピットフォール
✕ スクリューサイズの選択 — 結節部から骨折部位を横切って髄腔に挿入するスクリューは、適切なサイズを選ぶ[1] ✕ 慢性型骨折での骨移植省略 — 骨硬化・髄腔閉塞を認める場合に骨移植を省略すると偽関節率が著明に上昇する ✕ ねじ山の位置 — スクリューはねじ山が骨折部位を通過し、骨内膜表面に適切に噛みこむように挿入する[1] ✕ エントリーポイントの誤り — 挿入点は結節部の内側の高い位置にあり、透視下でガイドワイヤを挿入してからリーミングを行う[1] ✕ 皮神経の損傷 — 皮切・軟部組織剥離時に足部外側の皮神経を損傷しないよう注意する ✕ 術後荷重の開始時期 — 術後4週間後から、モールドされた装具で足部を保護して許容範囲内の荷重を許可する[1]
術後管理
術後X線斜位像・正面像 — 髄内スクリュー設置確認・骨折部圧迫・整復位の評価
手術タイミング: アスリートに対しては、初期から手術的治療を提案する場合がある[1]
術後荷重: 術後4週間後から、モールドされた装具で足部を保護して許容範囲内の荷重を許可する[1]
VTE予防: 下肢固定・免荷期間中はエドキサバンまたは低分子ヘパリン皮下注を考慮(高リスク例:肥満・長距離移動・既往歴あり)。弾性ストッキング着用を推奨
疼痛管理: 多モード鎮痛(NSAIDs・アセトアミノフェン)。患肢挙上(術後48〜72時間)で腫脹・疼痛を軽減。術後急性期はアイシングを1日数回実施
リハビリテーション: プロのアスリートでは、適切に設置した髄内スクリューと積極的なリハビリテーションプロトコルにより、低い再骨折率で早期のスポーツ復帰が得られている[5]
フォローアップ
術後2週: 創部確認・抜糸(または縫合糸吸収確認)・X線(スクリュー位置確認)
術後4週: モールドされた装具で足部を保護し、許容範囲内の荷重を開始[1]
スポーツ復帰の時期: 4.5mmカニュレイテッドスクリューで固定したアスリートは平均7.5週(10日〜12週)で競技に復帰した[6]
術後6ヶ月: X線(骨癒合完成・スクリュー位置の長期評価)。疼痛・再骨折の有無を確認
術後12ヶ月: 最終評価(骨癒合・スクリュー抜去の検討:有症状例・競技選手)
予後
骨癒合:Jones骨折に4.5mm カニュレイテッドスクリュー固定を行ったアスリートで、臨床的癒合100%、X線上の癒合の程度は平均98.9%(90〜100%)[6]
スポーツ復帰:4.5mm カニュレイテッドスクリュー固定後、全例が平均7.5週(10日〜12週)で競技に復帰[6]
保存療法:近位第5中足骨骨折の多くは外固定で癒合するが、手術で回復期間が短くなる骨折型もある[3]
再骨折:急性Jones骨折を固定したNFL選手25例のうち3例(12.0%)が再骨折し、再手術を要した[5]
慢性疼痛残存:適切な治療後に5〜10%で外側足部の不快感が持続(腓骨筋腱炎・皮神経損傷)
スクリュー抜去:症状のない例では必須でないが、競技スポーツ選手では骨癒合完成後(術後12〜18ヶ月)に抜去を考慮
📋 上級医報告前チェックリスト
1 Zone分類を確認(Zone 2〔骨幹端-骨幹接合部〕を通る骨折がJones骨折。Zone 1〔結節部〕・Zone 3〔近位骨幹部〕の骨折と区別する)[1] 2 骨折の慢性度評価(急性型 vs 慢性型:X線上の皮質肥厚・硬化・骨髄腔閉塞の有無を記録) 3 Quill分類(Grade I〜III)を確認し術前計画に反映(骨移植適応の判断根拠として記録) 4 患者活動レベルの聴取(アスリートには初期から手術的治療を提案する場合がある)[1] 5 第5中足骨の髄腔の評価(髄腔に適切なサイズのスクリューを選ぶため)[1] 6 軟部組織・腓骨筋腱の評価(腱損傷・脱臼の合併を触診・超音波で確認) 7 治療方針の決定根拠の記録(治癒の可能性と治療戦略はZone〔領域〕によって異なる)[1] 8 術後荷重プロトコルの確認(術後4週からモールドされた装具で保護して許容範囲内の荷重を許可[1] 。患者への説明と文書化)
文献
Buckley RE, Moran CG, Apivatthakakul T(編)(2018)AO Principles of Fracture Management(第3版). Thieme.(日本語版:AO法骨折治療 第3版、医学書院、2020) DOI: 10.1055/b-006-149767
Jones R(1902)Fracture of the base of the fifth metatarsal bone by indirect violence. Ann Surg, 35(6):697–700. PMID: 17861128
Lawrence SJ, Botte MJ(1993)Jones' fractures and related fractures of the proximal fifth metatarsal. Foot Ankle, 14(6):358–65. PMID: 8406253
Quill GE(1995)Fractures of the proximal fifth metatarsal. Orthop Clin North Am, 26(2):353–61. PMID: 7724197
Lareau CR, Hsu AR, Anderson RB(2016)Return to play in National Football League players after operative Jones fracture treatment. Foot Ankle Int, 37:8-16. PMID: 26353796
Porter DA, Duncan M, Meyer SJ(2005)Fifth metatarsal Jones fracture fixation with a 4.5-mm cannulated stainless steel screw in the competitive and recreational athlete. Am J Sports Med, 33(5):726–33. PMID: 15722272