骨盤
Pelvis
骨盤は仙骨と左右の寛骨(腸骨・坐骨・恥骨が癒合)から構成され、脊椎と下肢を連結する環状骨構造である。体重支持・内臓保護・分娩の産道としての機能を担う。骨盤輪の後方支持構造(仙腸靱帯・後仙腸靱帯)は力学的安定性の80%を担い、この部位の損傷が骨盤骨折の不安定性の主因となる。
骨盤の解剖図
骨盤骨折は外傷全体の3〜8%を占め、高エネルギー外傷では生命を脅かす大量出血を伴うことがある。骨盤内の大血管(内腸骨動脈・仙骨前静脈叢)からの出血は致死的となりうるため、初期診療では循環動態の安定化と骨盤固定(固定ベルト・創外固定)が優先される。高齢者では低エネルギー転倒による骨粗鬆症性骨盤骨折(脆弱性骨折)も重要。
骨粗鬆症による脆弱性骨折が多発する部位。高齢患者では骨粗鬆症の評価・治療介入(OLS)を同時に推奨。
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骨盤骨折(安定型)
Pelvic Ring Fracture, Stable
骨盤後方支持構造(仙腸関節・後仙腸靱帯・仙棘靱帯・仙結節靱帯)が完全に温存された安定型骨盤輪骨折。前方輪(恥骨枝)のみの骨折または後方輪に損傷がない骨折が該当する。骨盤輪の力学的安定性が保たれるため、後方転位・骨盤開大は生じない。高齢者の低エネルギー転倒による脆弱性骨折(恥骨枝骨折・仙骨脆弱性骨折)や、若年者の軽微な前方輪損傷が含まれる。
寛骨臼後壁骨折
Acetabular Posterior Wall Fracture
寛骨臼後壁(後方関節面を支持する骨性構造)の骨折で、寛骨臼骨折の中で最多(約25〜30%)を占める。股関節後方脱臼に伴うことが多く、ダッシュボード損傷(交通外傷で膝→大腿骨→後方寛骨臼に軸方向圧迫が加わる機転)が代表的な発生機転。後壁骨片が関節内に留置されると股関節の安定性が失われ、軟骨損傷・骨頭壊死・早期変形性股関節症の発生リスクが高まる。