足関節の腓骨外果骨折が脛腓靭帯(下脛腓靭帯)より遠位に生じ、かつ内側構造(三角靭帯断裂または内果骨折)を合併する型 がAO分類44-A2である。AO/OTA分類では44Aが「脛骨/腓骨、果部セグメント、靱帯結合より遠位での腓骨損傷」であり、本型は脛腓靭帯が保たれた状態で腓骨が骨折する内転損傷であり、靱帯結合より遠位の骨折(type A)のうち内側の損傷を伴わない単独骨折は安定している [1] 。脛腓靭帯下型でも内側損傷を伴わない単独骨折は安定して保存療法が可能だが、治療は内側損傷の性状(三角靭帯断裂 vs 内果骨折)と腓骨転位量によって保存療法と手術療法を判断し、転位のある不安定な骨折には原則ORIF を選択する[1] 。
重症度・疫学
年間発生件数: 足関節骨折の年間発生率は約122/100,000人(英国の疫学研究。若年男性と高齢女性に多い)であり、下肢骨折では大腿骨近位部骨折に次いで頻度が高い[3] [1] 。44-A2(脛腓靭帯下型+内側損傷合併)の頻度を示す確立した統計はなく、Weber A骨折全体は保存療法が選択されることが多い[3] 。
好発: 二峰性の分布を示し、高齢女性(転倒・捻転による低エネルギー外傷)と若年男性(サッカーなどのスポーツ外傷)に多い[3] [1]
受傷機転: 足部回外位で距骨に内転方向の外力が加わる機序(supination-adduction)。低エネルギーのねじれ損傷が多い。緊張下の外側にまず損傷が生じ(外側側副靭帯断裂や外果の横骨折)、外力が持続すると距骨がさらに傾いて内果の剪断圧迫骨折(しばしば垂直または斜め方向の骨折線)が生じる[1]
手術適応の考え方: 手術適応は単一のパラメータの絶対値ではなく、複数のパラメータの組み合わせで判断する[4] 。軟部組織の状態も手術の決定に非常に重要である[1]
注意すべき合併症
足関節外側靭帯損傷の合併(前距腓靭帯・踵腓靭帯。type Aでは外側側副靱帯の断裂や靱帯付着部の裂離骨折として生じうる。合併率を示す確立した数値はない)[1]
腓骨腱への配慮(後外側の展開・後方支持プレート設置時に腓骨筋腱を前方へ牽引する。損傷・脱臼の頻度を示す確立した数値はない)[1]
外側側副靭帯複合体(前距腓靭帯・踵腓靭帯・後距腓靭帯)の断裂。足関節が不安定で整復位を保てない場合にのみ靭帯縫合が必要で、一般に外科的修復なしで治癒する[1]
距骨の骨軟骨損傷(type Aでは距骨の強制内転・傾斜に伴って生じうる。頻度を示す確立した数値はない)[1]
内果の骨折線は内転(回外)損傷でしばしば垂直または斜め方向を呈し、圧迫力が加わった側にある(脛骨関節面の嵌入を伴いうる)。また、三角靭帯や骨軟骨骨片が内側関節裂隙に介在・嵌頓し整復を妨げることがあり、この場合は除去が必要である[1]
外傷後変形性足関節症(距腿関節窩の不適合・腓骨短縮は接触面積を減少させ、関節軟骨に過剰な負荷をかける)[1]
DVT/PE(深部静脈血栓症は報告された合併症の一つ。肺塞栓は手術一般に伴う合併症として挙げられている)[3]
創部感染(糖尿病患者では足関節骨折手術の合併症発生率がはるかに高く、感染が多くみられる)[1]
治療方針
⚠️ 保存療法(内側損傷合併例での適応は限定的)
→ 内側損傷が三角靭帯損傷のみ(内果骨折なし)かつストレス撮影で内側クリアランスの開大がない場合に考慮(この判断枠組みはSER型で示されたもの)[4] → 外旋ストレスX線(用手または重力)での内側クリアランスが5mm未満であれば保存療法を検討する(5mm以上は深層三角靭帯断裂に一致する。4mm以上かつ上方脛距裂隙より1mm以上広い場合も不安定な足関節骨折とみなされる)[4] → 膝下(短下肢)ギプスによる固定(含まれた試験では6週間の膝下または長下肢ギプスが用いられている)[3] → 保存療法中は綿密なX線フォローで転位・距骨亜脱臼の増大がないことを確認する(短期間の荷重後にX線を再撮影する方法もある)[4] [1] → 機能回復には時間を要することを患者に説明する(足関節骨折術後は2年経過してもある程度の機能低下は止むをえず、受傷後24ヶ月までかなりの身体的障害が確認できる場合がある)[1]
🔷 手術適応基準・術式選択
ℹ 第一選択(腓骨骨折転位あり):ORIF — 横骨折を伴って完全に裂離した外果は整復し、テンションバンドとして機能するように1/3円プレートで固定する+内側損傷の処置[1] ℹ 内果骨折あり:内果のORIF(骨折線に垂直なラグスクリュー2本、または3穴の1/3円プレートによる支持固定)を追加。type Aの内果は垂直剪断骨折であり、このような圧迫骨折にテンションバンドワイヤは適さない[1] ℹ 三角靭帯断裂のみ:三角靭帯損傷は常に展開を必要とするわけではない。腓骨整復後の術中X線で内側関節裂隙の開大が残存する場合や腓骨の整復が困難な場合に内側を展開する。内側側副靭帯や骨軟骨片が関節裂隙に嵌頓していれば除去し、術後の可動時の再嵌頓を予防するため三角靭帯を修復する[1] ℹ 腓骨骨折転位なし・内果骨折あり:内果のみORIF(骨折線に垂直なラグスクリュー2本または支持プレート)。転位が最小限の小さくて固定が困難な内果骨片では保存的治療が効果的であるというエビデンスがある[1] ℹ 骨粗鬆症例:腓骨には抗滑走(支持)プレートやロッキングプレート、間接的整復手技を用いて腓骨長を回復・維持する。内側では2.7mm皮質骨スクリューが小骨片の保持に有用[1] ℹ 開放骨折:すべての開放創のデブリドマンを行った後、ほとんどの例で距腿関節窩の解剖学的整復と安定した固定を行う。開放創は閉創せず、患肢挙上のうえ48〜72時間後にsecond lookを行う[1]
治療選択アルゴリズム — 内側損傷の性状・足関節安定性評価・腓骨転位量に基づく保存療法 vs ORIF の選択基準
診断・評価
外果・内果部の腫脹・圧痛・皮下出血斑が主所見[1] 。三角靭帯(内側靭帯複合体)の付着部(内果尖端〜距骨内側)の圧痛を確認するが、深層三角靭帯の破綻の指標としての内側圧痛は感度57%・特異度59%・正確度42%であり、単独では信頼できない[4] 。足部の神経血管損傷を注意深く評価する[1] 。
X線(正面・側面・mortise view): 腓骨の骨折線(脛骨天蓋のレベルかそれよりわずか遠位部の横骨折)の確認[1] 。内果骨折の有無・転位量。Mortise view(下腿20°内旋)での距骨傾斜・内側クリアランス・上方クリアランス評価[1] 。
ストレスX線: 徒手または重力による外旋ストレス下での内側クリアランスを計測し、5mm以上は深層三角靭帯断裂と合致する(文献上、陽性とする内側クリアランスの値には幅があり、正常値は1〜5mmと報告されてきた)。ただし手術適応は単一の指標の絶対値ではなく複数のパラメータの組み合わせで判断する[4]
MRI: 関節安定性・軟部組織の完全性に疑問が残る個々の症例で三角靭帯の完全性評価に有用となりうる(系統的レビューでは確定的な価値は示されていない)。予備的報告では、徒手ストレスX線陽性(内側クリアランス>5mm)の21例中19例(90%)でMRI上は深層三角靭帯の部分断裂にとどまっていた(短期・不完全な追跡のため解釈には注意を要する)[4]
CT: 果部骨折でCTが必要となることは稀だが、正確な骨折型や受傷機序が明確でない場合に有用である。脛腓靭帯結合より遠位の回外-内転骨折(44-A2)では、CTが脛骨関節面内側の嵌入を明瞭に描出し術前計画に役立つ[1]
術前X線(mortise view・側面像)— 脛腓靭帯下腓骨骨折・内側クリアランス増大・距骨傾斜の所見
ストレスX線(外反ストレス)— 内側クリアランス増大・距骨傾斜による内側不安定性の評価
44-A骨折分類比較 — A1(脛腓靭帯下型・単純)vs A2(脛腓靭帯下型・内側損傷合併)vs A3(脛腓靭帯下型・内側損傷合併・後踝骨折あり)の3パネル模式図
✅ 許容される整復
✓ 腓骨長の解剖学的回復(脛骨天蓋と外果それぞれの軟骨下骨層のアライメントに段差がない)[1] ✓ 距腿角が健側と同等(正常値は83±4°。値が大きすぎても小さすぎても不安定性・腓骨長の変化・距腿関節窩の転位を示唆する)[1] ✓ 内側クリアランス = 上方(距骨と脛骨天蓋間)クリアランス(関節裂隙の幅が全体にわたり均等であること)[1] ✓ 内果関節面の解剖学的整復(脛骨関節面の嵌入があれば挙上して移植骨で支持する)[1] ✓ 腓骨の回旋変形なし(透視で確認できるX線学的パラメータを用いて正確なアライメント・長さ・回旋を確認する。解剖学的整復が得られない場合は術後早期の脛腓靭帯結合部CTで回旋変形を除外する)[1]
❌ 許容されない変形
✕ 距骨の外側転位・距骨傾斜(わずか1mmの距骨外側転位で距骨-脛骨間の接触面積が平均42%減少し、強いピーク荷重を生じ、二次的な軟骨喪失と外傷後変形性関節症のリスクを高める)[3] ✕ 腓骨短縮(脛骨天蓋と外果の軟骨下骨層の段差として認識される。どんなわずかな短縮でも矯正しなければならない)[1] ✕ 内側クリアランス増大(内側関節裂隙の開大は距腿関節窩の転位を示す。保存療法を選んだ場合は距骨亜脱臼が起こりうるため綿密なフォローが必要)[1] [4] ✕ 距腿関節窩の不適合(許容されにくく、関節軟骨の異常負荷につながる)[1] ✕ 腓骨の回旋変形(腓骨短縮や回旋異常を修復し、距腿関節窩の適合性を再建しなければならない)[1]
手術手技
体位
仰臥位: 患者は仰臥位とし、患側殿部下に砂嚢を入れる。これにより麻酔下に通常起こる下肢の外旋を防ぎ、足部が中間位となる。下腿は柔らかい枕にのせて膝関節を30°屈曲位とする。この肢位で内側・外側ともに展開しやすくなる。止血帯は必ずしも必要ではないが使用してもよい。透視装置は側面像と軸位像を撮影するときは手術台の遠位から導入し、透視画像のスクリーンは外科チームおよび放射線技師に全景が見られるように配置する[1]
手術体位 — 仰臥位・患肢外旋・ボルスター設置・透視配置(AP / Mortise / 側面)
腓骨ORIF(プレート固定) — 第一選択
ほとんどの場合、固定の最初のステップは腓骨の再建であり、腓骨の長さ・回旋・アライメントを注意深く再建する。ただし三角靭帯や骨軟骨骨片が介在して完全な整復を阻害している場合や腓骨の整復が難しい場合は、腓骨の最終的固定に先立って内側を展開しなければならないこともある[1] 。
外側アプローチ: 外側の皮膚切開は最小限の軟部組織剥離で整復および内固定が行える部位におく。外側プレートを用いる場合は、プレートが縫合部の直下にならないようにまっすぐな皮切をやや前方におく。type A 損傷では前外側皮切を用いるものもある。腓骨後方に抗滑走(支持)プレートをあてる場合はやや後方に皮切をおくが、この皮切では腓腹神経に注意する。腓骨前方を走行する浅腓骨神経を損傷しないように注意する[1]
骨折の観察・洗浄: 軟部組織の剥離は最小限にとどめ、単純骨折では血腫除去・骨膜剥離・解剖学的整復のために必要最小限の展開を行う。手術が遅れた症例では整復に先立ち骨折面に凝集した血腫を丁寧に取り除く(本型では脛腓靭帯が保たれた状態で腓骨が骨折する内転損傷である)[1]
整復: (先端鋭の)小さな整復鉗子やK-ワイヤで仮固定し解剖学的に整復する。X線透視下に脛骨天蓋と外果の高さの関係、または健側と比べた距腿角で整復位を確認する[1]
プレート固定: 骨質がよい場合、大きめの外果骨片は骨の形状によく合わせた1/3円プレートに軽く圧迫をかけ、テンションバンドとして固定する。外果先端部のみの裂離骨折ではテンションバンドワイヤが有用で、必要に応じて靭帯縫合を追加する。外側の損傷が骨靭帯性の場合はテンションバンド法か腓骨髄腔内への逆行性スクリューも使用できる[1]
透視確認: 透視で確認できるX線学的パラメータを用いて正確なアライメント・長さ・回旋を確認する。腓骨骨折の解剖学的整復が得られなかった場合には、腓骨の回旋変形を除外するために術後早期に脛腓靭帯結合部のCT撮影を行うのが賢明である[1]
外側アプローチ+腓骨プレート固定の術中透視像(Mortise view・側面像)と内果スクリュー固定
⚠️ 腓骨ORIF ピットフォール
✕ 腓骨の回旋整復不良 — 腓骨先端に骨把持鉗子を用いるとプレート固定の際の回旋コントロールに有用である。透視下に脛骨天蓋と外果の高さの関係、健側と比べた距腿角で整復位を確認し、解剖学的整復が得られなかった場合は術後早期に脛腓靭帯結合部のCT撮影を行う[1] ✕ 腓骨の短縮残存 — 距腿関節窩の適合性がわずかでも障害されると接触面積が減少し、関節軟骨に過剰な負荷がかかる[1] ✕ プレートの設置位置 — 後方支持(抗滑走)プレートを用いる場合は、腓骨後縁を操作しやすいように皮切をやや後方におく必要がある[1] ✕ 靭帯結合損傷と過剰診断して脛腓スクリューを挿入しない — 本型は脛腓靭帯が保たれた状態で腓骨が骨折する内転損傷である。さらに固定が必要かどうかは、腓骨長の修復・腓骨の固定・内側損傷の再建を終えた時点で、フックテストや外旋ストレス下の透視により靭帯結合の安定性を確認して決める(内側の関節裂隙が2mm以上開大すれば靭帯結合の不安定性を疑う)[1]
内果処置 — 内果骨折例(ORIF)
腓骨整復後の術中X線所見で内側関節裂隙の開大が残存していたり、腓骨の正確な整復が困難な場合には内側の展開(内果骨折があればORIF)が必要である[1] 。
内側アプローチ: 標準的な内側皮切は内果のやや後方で脛骨に沿って置き、遠位で前方へJ字状にカーブさせる。足関節の視野を確保するためにより前方に置く弯曲皮切も可能。伏在静脈・伏在神経を保護する[1]
骨折面の処置: 骨折面に介在する骨膜を除去する。内転(回外)骨折では内果の主要な骨折線はしばしば垂直または斜め方向で、圧迫力が加わった側にある。脛骨天蓋の関節面内側角は骨折部を前方に開くようにして観察し、脛骨関節面の嵌入は(疑いがあればCTで)診断して丁寧に整復した後、小さな骨移植片で支える[1]
整復・仮固定: 整復位が得られたらK-ワイヤで仮固定する[1]
本固定(選択):
内果の垂直(剪断)骨折:整復位が得られたらK-ワイヤで仮固定し、最終固定として骨折線に垂直にラグスクリュー2本を挿入するか、3穴の1/3円プレートで支持固定する。骨折先端に短い1/3円プレート(2〜3穴)か2.7プレートを支持目的で用いると骨折部の安定性がよくなる[1]
type Aの内果は圧迫(剪断)骨折であり、テンションバンドワイヤは適さない。骨折線に垂直なラグスクリュー2本、または短い支持プレート(2〜3穴の1/3円プレートまたは2.7mmプレート)を用いる[1]
透視最終確認: 術中にX線撮影や透視でスクリューの位置を確認する[1]
⚠️ 内果固定ピットフォール
✕ 骨片が十分に大きい場合は平行なスクリュー2本で固定する。小さな骨片の場合はスクリュー1本とK-ワイヤを併用するか、2.7mm皮質骨スクリュー2本をラグスクリューとして使う[1] ✕ 脛骨関節面内側の嵌入の見落とし — 疑いがあればCTで診断し、丁寧に整復した後に小さな骨移植片で支える[1] ✕ 関節内スクリュー貫通 — スクリュー挿入時は関節面を貫かないように注意する。スクリューはねじ山が完全に骨折線を超える程度の長さで十分で、脛骨遠位部に過剰な長さのスクリューを用いると固定性が悪くなる[1] ✕ 三角靭帯断裂を見逃す — 内側側副靭帯または骨軟骨骨片が内側関節裂隙に嵌頓していることがあり、それを取り除いたうえで再嵌頓予防に三角靭帯を修復する。腓骨整復後の術中X線で内側関節裂隙の開大が残存していたり腓骨の正確な整復が困難な場合には内側の展開が必要である[1]
三角靭帯修復(三角靭帯断裂例)
文献4の治療フローでは、腓骨骨折のORIFが手術治療の内容であり、三角靭帯の縫合の適応はないとされる。文献1では、腓骨整復後の術中X線で内側関節裂隙の開大が残存する場合や腓骨の正確な整復が困難な場合に内側を展開し、関節裂隙に嵌頓した内側側副靭帯や骨軟骨骨片を除去した上で、術後の可動時の再嵌頓を予防するために三角靭帯を修復するとされる[4] [1] 。
内側アプローチ: 内果尖端の1〜2cm近位から始まる4〜8cmの緩やかな弯曲切開。伏在静脈・伏在神経を保護する[2] [1]
靭帯断裂部の確認: 三角靭帯は表層(扇状の脛踵靭帯)と深層(前・後脛距靭帯)からなる[1] 。文献2では、症候性の足関節不安定性があり、臨床的に内側不安定性が疑われ関節鏡でも確認された全例に内側靭帯の外科的探査を行うとしている[2]
修復: 靭帯が骨付着部から剥離している場合(type I)は、内果内側面を粗造化したうえでアンカーを内果尖端の6mm上方に留置して再付着させる[2] 。中間部の断裂は type II 損傷に分類される(文献2は近位の断裂/剥離を type I、中間部の断裂を type II、三角靭帯とスプリング靭帯の遠位の断裂/剥離を type III としている)[2]
安定性確認: 術中の外旋ストレス下X線透視で内側の関節裂隙が2mm以上開大すれば、脛腓靭帯結合の不安定性を疑う[1] 。文献2では術中に関節鏡的評価も行われており、2mmフックで脛距関節が2mm以上開くか、5mm関節鏡が挿入できるかで安定性を判定している[2]
術後管理
術後X線(Mortise view・側面像)— 腓骨プレート固定+内果スクリュー固定。足関節モーティス対称性回復の確認
手術タイミング: 受傷後6〜8時間以内に手術を行えば腫脹のほとんどは血腫であり、手術創の一次的閉鎖が可能である。浮腫や水疱が生じた場合は、軟部組織が回復するまで少なくとも4〜6日間手術を延期することが強くすすめられる。骨折は愛護的に徒手整復を行った後、十分に下巻きをあてたギプス副子で外固定し、下肢を挙上する。骨折水疱の消失・擦過傷の上皮化・皮切予定部位のしわの出現が手術可能の指標となる。開放骨折はすべての開放創のデブリドマンを行った後、距腿関節窩の解剖学的整復と安定した固定を行う[1]
術後荷重: 荷重の可否は内固定の安定性と患者の協力度に大きく左右される。6週間ギプス固定のまま段階的に荷重を増やす方法でも問題は報告されておらず、この時期が過ぎれば自動運動と全荷重を許可する。三角靭帯修復例では、足関節に荷重しても疼痛がなくなり次第全荷重を許可し、安定化装具靴を術後6週間、歩行時に着用する。糖尿病・末梢神経障害の患者では長期間の制限下荷重が必要になる場合がある[1] [2]
VTE予防: 深部静脈血栓症は報告されている合併症の一つである[3]
疼痛管理: 術後早期の弾性包帯の使用は腫脹軽減に最適であることが無作為化試験で示唆されている[1]
リハビリテーション: 早期から股関節・膝・足趾の自動運動を開始するよう奨励する。24〜48時間で創に問題がなければ、理学療法士の指導下で足関節の自動運動を始める。自動背屈運動が可能になった後、足関節をフリーにするかギプスで保護するかは、内固定の安定性・患者の移動能力・コンプライアンスの予見によって判断する。文献によれば、術後6週間、足関節の外固定をしてもしなくても長期成績は同様であり、早期に可動域運動を開始した群はより早期に完全復帰が可能であった[1]
フォローアップ
術後早期(創部確認): 糖尿病患者では創部を丁寧に定期的に観察することが不可欠であり、頻繁にギプスを巻き直す必要が生じうる[1]
術後6週: この時期を過ぎれば自動運動と全荷重を許可する(術後6週間、足関節の外固定をしてもしなくても長期成績は同様であったとの報告がある)[1]
術後12週前後: 全荷重と活動復帰の評価(脛腓結合間スクリューを用いた場合は、患者が完全に活動復帰する前に術後12〜16週で抜去する)[1]
中長期: 変形性足関節症の評価には長期の経過観察が必要(足関節骨折後、末期変形性関節症に至るまでの潜伏期間は20年に及ぶこともあり、7年の追跡でも外傷後変形性関節症の確定には不十分とされる)[3]
長期フォロー時: 機能評価には妥当性の確認された尺度(Olerud Molander Ankle Score、Lower Extremity Function Scale、疼痛のVAS等)を用いる[3]
予後
骨癒合:糖尿病・末梢神経障害の患者では遷延癒合が多くみられ、神経障害性の偽関節を発症する可能性があるため丁寧な観察が重要となる[1]
外傷後変形性足関節症:平均3.5年・7.0年追跡の2試験の統合結果では、放射線学的な変形性関節症の所見は手術群44/66・保存群50/75で群間差がなかった(RR 1.05, 95% CI 0.83–1.31)。末期変形性関節症に至るまでの潜伏期間は20年に及ぶこともあり、7年の追跡でも確定には不十分とされる[3]
足関節可動域:ある試験では対側足関節と比べた背屈可動域の喪失が手術群で有意に少なかった(9° 対 16°、報告されたP = 0.044)。別の試験では7年時点で両群の可動域に差はなかった[3]
主要合併症:深部・表層感染、創閉鎖の問題、皮膚潰瘍、深部静脈血栓症、複合性局所疼痛症候群1型、内固定材の抜去の必要、手術創の圧痛。早期治療失敗(徒手整復の失敗)は保存療法群で有意に多かった(2/116 対 19/129、RR 0.18, 95% CI 0.06–0.54)が、それ以外に報告された合併症については手術群と保存群の間に統計学的に有意な差はなかった[3]
慢性内側不安定性:文献2の54例の連続症例では、1例を除く全例(98%)に内側の関節溝の疼痛、15例(28%)に後脛骨筋腱に沿った疼痛、13例(24%)に外果前縁に沿った疼痛がみられた[2] 。足関節骨折全般では、完璧な解剖学的整復と安定した固定が得られても25%もの患者で満足な結果が得られていない[1]
📋 上級医報告前チェックリスト
1 AO分類コードを確認(44A = 脛骨/腓骨、果部セグメント、靱帯結合より遠位での腓骨損傷)[1] 2 内側損傷の性状を確認(内果骨折 vs 三角靭帯断裂)— X線・ストレスX線で評価し、関節安定性や軟部組織の完全性に疑問が残る症例ではMRIを考慮[4] 3 徒手または重力による外旋ストレスX線での安定性評価(内側クリアランスが5mm未満、かつ上方脛距裂隙との対称性が保たれる → 保存療法を検討。ただし単一の指標の絶対値で適応を決めない)[4] 4 Mortise view での距腿角(83±4°)と、内側クリアランスと上方(距骨-脛骨天蓋間)クリアランスの対称性の確認[1] 5 腓骨骨折の転位量・短縮・回旋の評価(転位のある不安定な骨折ではORIFで解剖学的再建と安定した固定性が最も獲得しやすい)[1] 6 足部の神経血管損傷を注意深く評価する(術中は浅腓骨神経・腓腹神経・伏在神経と伏在静脈、後脛骨神経血管束の保護に注意する)[1] 7 軟部組織の状態の確認(腫脹・水疱・擦過傷。手術のタイミングを左右する最重要因子)[1] 8 術式計画の確認(ほとんどの場合、固定の最初のステップは腓骨の再建。術前計画にはインプラントの選択とプレート長・ラグスクリュー挿入位置の検討を含める)[1] 9 術後荷重スケジュールの確認(内固定の安定性と患者の協力度に大きく左右される)[1] 10 VTE予防薬の処方確認
文献
Buckley RE, Moran CG, Apivatthakakul T(編)(2018)AO Principles of Fracture Management(第3版). Thieme.(日本語版:AO法骨折治療 第3版、医学書院、2020) DOI: 10.1055/b-006-149767
Hintermann B(2003)Medial ankle instability. Foot Ankle Clin, 8:723–38. PMID: 14719838
Donken CC, Al-Khateeb H, Verhofstad MH, van Laarhoven CJ(2012)Surgical versus conservative interventions for treating ankle fractures in adults. Cochrane Database Syst Rev, 8:CD008470. PMID: 22895975
van den Bekerom MP, Mutsaerts EL, van Dijk CN(2009)Evaluation of the integrity of the deltoid ligament in supination external rotation ankle fractures: a systematic review of the literature. Arch Orthop Trauma Surg, 129:227-35. PMID: 18953550