AO分類44-A3は、脛腓靭帯結合より遠位(infrasyndesmotic)の腓骨損傷の型で、44-A3骨折に後内側骨片を伴うことは稀であり、その骨片は常に内果骨片に隣接している[1] 。この後内側骨片は、展開整復の後に小骨片用海綿骨スクリューで後内側方向から固定できる[1] 。後脛腓靭帯で外果とつながる後外側のVolkmann三角骨片は、主にtype B(稀にtype C)の骨片で、側面像で全関節面の25%未満で距骨が後方へ亜脱臼する傾向がなければ固定を要しない[1] 。転位のある不安定な骨折ではORIFで解剖学的再建と安定した固定を得る[1] 。
重症度・疫学
疫学: 足関節骨折は最も多くみられる骨折の1つであり、下肢では大腿骨近位部骨折に次いで2番目に多い[1] 。44-A3骨折に後内側骨片を伴うことは稀である[1]
好発: 若年男性と高齢女性の二峰性の年齢分布を示し、高齢者の足関節骨折が著しく増加している[1]
受傷機転: 足部が回外した状態で距骨に内転方向の外力が加わり、緊張下の外側がまず破綻する(外側側副靱帯断裂・付着部の裂離骨折・足関節の高さかやや遠位での外果横骨折)。外力が続くと距骨がさらに傾き、内果の剪断圧迫骨折が生じる[1] 。44-A型はinfrasyndesmotic(脛腓靱帯下型)骨折である[1]
治療方針: 転位のある不安定な骨折はORIFの適応[1] 。44-A3に伴う後内側骨片は内果骨片に隣接し、展開整復の後に小骨片用海綿骨スクリューで後内側方向から固定できる[1]
注意すべき合併症
足関節不安定性・距骨亜脱臼(距骨が後方へ亜脱臼する傾向の有無が、後方骨片を固定するかの判断材料になる)[1]
外傷後変形性足関節症(後果骨片を伴う足関節骨折131例・平均6.9年で、X線上の変形性関節症は小骨片16%・中骨片48%・大骨片54%)[3]
神経損傷(外側進入では浅腓骨神経・腓腹神経を損傷しないよう注意)[1]
腱の絞扼(非常に稀だが、高度に転位した脱臼骨折では後脛骨筋腱が絞扼され整復の障害になることがある)[1]
DVT/PE
創部感染・皮膚壊死(創は緊張がかからないように縫合し、強い緊張をかけないと閉じられない場合は創を開放しておく)[1]
関節内インプラント穿通(スクリュー挿入時に関節面を貫かないよう注意する)[1]
機能障害の遷延(成績は時間とともに改善するが、受傷後24か月まで、かなりの身体的障害がしばしば残る)[1]
治療方針
⚠️ 保存療法(限定的適応)
→ 靱帯結合より遠位の骨折(type A)のうち、内側の損傷を伴わない単独骨折は安定しており、保存的に治療できる[1] → 愛護的な徒手整復の後、十分に下巻きをあてたギプス副子で外固定し、下肢を挙上する[1] → ストレス撮影は、完全な麻酔下で健側と比較する場合にのみ有用である[1] → 高齢者の不安定な足関節骨折では、6か月時点のギプス固定とORIFの成績が同等とする無作為化臨床試験がある[1]
🔷 手術適応基準・術式選択
ℹ ORIF — 外果(腓骨)を固定し、内果骨折を固定したうえで、内果骨片に隣接する後内側骨片は展開整復後に小骨片用海綿骨スクリューで後内側方向から固定する[1] ℹ 外果骨折(44-Aの外側損傷):横骨折で完全に裂離した外果は1/3円プレートをテンションバンドとして機能させて固定する。骨靱帯性の裂離ではテンションバンド法か腓骨髄腔内への逆行性スクリューを用いる[1] ℹ 後内側骨片:内果骨片に隣接する後内側骨片は、展開整復の後に小骨片用海綿骨スクリューで後内側方向から固定できる[1] 。後内側進入法(アキレス腱と内果の間の皮切)は、内果骨折に後果骨折が合併しているときに適応となる[1] ℹ type B(稀にtype C)の後外側(Volkmann三角)骨片では、側面像で全関節面の25%未満で、距骨が後方へ亜脱臼する傾向がなければ固定を要しない[1] ℹ 内果骨折(type Aでは内転による内果の剪断圧迫骨折):K-ワイヤで仮固定し、骨折線に垂直なラグスクリューで固定する。短い1/3円プレート(2〜3穴)か2.7プレートで支持すると安定する。この圧迫骨折にテンションバンドワイヤは適さない[1] ℹ 腓骨固定後、術中の外旋ストレスで内側関節裂隙が2mm以上開大すれば脛腓靱帯結合の不安定を疑い、不安定なら腓骨から脛骨へポジショニングスクリューを挿入する[1]
治療選択アルゴリズム — 足関節44-A3骨折における外果・後果・脛腓靭帯の評価と術式選択フロー
診断・評価
足関節の腫脹・疼痛・荷重不能を呈する。開放創・腫脹・変形・打撲・圧痛をみて、皮膚の変色や脱色は迅速な整復の必要性を示すことがある。足部の神経血管損傷を注意深く評価する[1] 。
X線正面像・側面像・モーティス像: 外果の脛腓靭帯下損傷(付着部の裂離骨折か外果横骨折。外側側副靱帯の断裂そのものはX線像では認識できず、骨折形態から推察する)[1] 。距骨と脛骨天蓋間の関節裂隙は内果と距骨内側の間隔と等しくなければならず、内側関節裂隙の開大は距腿関節窩の転位を示す[1] 。後果骨片の大きさは単純X線では正確に評価できない[2] 。
CT: 後果骨片の正確な大きさ・位置・向きを知るためにCTを使うことは正当化される。後果骨折はCTで後外側斜骨折型・内側延長型・小片型の3型に分けられる[2] 。
術前X線正面像・側面像・モーティス像 — 外果骨折(脛腓靭帯下)と後果骨片(Volkmann骨片)の評価
CT横断面・冠状断面・矢状断面 — 後果骨片の形態・転位量・関節内合併損傷の評価
44-A骨折分類比較 — A1(外果単独)vs A2(外果+内果)vs A3(外果+後果)の3パネル模式図
✅ 許容される整復
✓ 外果(腓骨)骨折:長さ・回旋の解剖学的整復(関節裂隙の幅が全体に均等で、脛骨天蓋と外果の軟骨下骨層の線が段差なく連続する)[1] ✓ 後方骨片(5%を超える例):術後の関節面の段差 <1mm(段差1mm以上では、骨片固定の有無にかかわらずX線上の変形性関節症が増える)[3] ✓ 距骨の傾斜:ストレス撮影は、完全な麻酔下で施行し健側と比較する場合にのみ有用である[1] ✓ 内側クリアランス(medial clear space):距骨と脛骨天蓋間の関節裂隙と等しい[1] ✓ 足関節モーティス:関節裂隙の幅が全体にわたり均等で、脛骨天蓋と外果の軟骨下骨層の線が段差なく連続する[1]
❌ 許容されない変形
✕ 術後の脛距関節面の段差1mm以上の遺残(後果骨片が5%を超える例で、固定の有無によらず変形性関節症が増える)[3] ✕ 腓骨長の短縮(わずかな短縮でも、X線像で脛骨天蓋と外果の軟骨下骨層の段差として認識できる)[1] ✕ 腓骨の外旋変形(距腿関節窩の適合性のわずかな障害でも接触面積が減り、関節軟骨に過剰な負荷がかかる可能性がある)[1] ✕ 内側関節裂隙の開大(距骨と脛骨天蓋間の関節裂隙より広い)[1] ✕ 脛腓靱帯結合の不安定(術中の外旋ストレスで内側関節裂隙が2mm以上開大)[1] ✕ 距骨の後方偏位の遺残(側面像で評価する)[1]
手術手技
体位
体位: 仰臥位で患側殿部下に砂嚢を入れる。脛骨遠位後内側への展開を容易にするには、健側殿部下に砂嚢を入れ、患側足関節部を対側下腿にのせて4の字にすることもある[1] 。対側下肢を伸展した完全な側臥位では、腓骨への外側・後外側進入と、後果への直接の後方進入(支持プレートまたは後方→前方のラグスクリュー)ができる[1] 。骨片が大きいときや支持プレートを使うときは、ボルスター上の腹臥位で腓骨と後果への後方進入が容易になることがある[1] 。止血帯は必ずしも必要ではない[1] 。透視装置は、側面像と軸位像を撮影するときは手術台の遠位から入れる[1] 。
手術体位 — 後外側アプローチのための半腹臥位または腹臥位・止血帯配置・透視配置(AP/側面)
腓骨(外果)固定 — 第一ステップ
外果骨折を先行固定し、腓骨の長さ・回旋の解剖学的基準を確立してから内果・後内側骨片を評価する。ほとんどの場合、固定の最初のステップは腓骨の再建である[1] 。
外側アプローチ: 腓骨の若干後方にまっすぐな皮切をおき、浅腓骨神経・腓腹神経を損傷しないよう注意する。type A損傷では前外側皮切を用いることもある[1]
骨膜下剥離・骨折部清掃: 軟部組織の剥離は最小限にとどめ、血腫除去・骨膜剥離と骨折部の最小限の展開を行う[1]
整復: ポインテッドリダクションクランプで骨折部を把持。X線透視下に脛骨天蓋と外果の高さの関係、または健側と比べた距腿角で整復位を確認する[1]
固定: 横骨折で完全に裂離した外果は1/3円プレートをテンションバンドとして機能させて固定する。骨靱帯性の裂離ではテンションバンド法か腓骨髄腔内への逆行性スクリューを用いる[1]
モーティス像確認: 腓骨整復後の術中X線で内側関節裂隙の開大が残存していないかを確認する(残存していれば内側の展開を検討する)[1]
腓骨(外果)ORIF — 外側アプローチ・解剖学的プレート固定の術中透視像(正面・モーティス像・側面)
⚠️ 腓骨固定 ピットフォール
✕ 腓骨の回旋不整(外旋変形のまま固定)— 距腿関節窩の適合性のわずかな障害でも接触面積が減り、関節軟骨に過剰な負荷がかかる可能性がある[1] ✕ 腓骨長の短縮 — わずかな短縮でもX線像で脛骨天蓋と外果の軟骨下骨層のアライメント段差として認識できるため、整復後に確認する[1] ✕ スクリューが足関節腔に迷入 — 外果下方にスクリューを挿入する際は関節面を貫かないように注意する[1]
後果(Volkmann骨片)固定 — 条件付き第二ステップ
腓骨固定後、後果骨片の残存転位を術中透視で再評価する(腓骨を正確に整復すると後方骨片の上方転位はある程度整復されることが多いが、骨片間の離開は残存しうる)[1] 。type B(稀にtype C)の後外側骨片では、側面像で全関節面の25%未満で、距骨が後方へ亜脱臼する傾向がなければ固定は不要 [1] 。固定の適応は、骨片の大きさの閾値よりも安定性など他の因子で判断するとの回答が外科医調査で最も多かった[4] 。
後内側進入法: 内果骨折に後果骨折が合併するときに適応となる。アキレス腱と内果の間に皮切をおき、筋膜を切開して展開し、後脛骨動静脈と神経を同定・保護する[1]
後果の直接整復: 後外側皮切にて後方骨片を直接展開し、整復してK-wireで仮固定する(この方法では展開が大きくなるが、より正確にスクリューを挿入できる)[1]
固定: 後内側骨片は展開整復の後、小骨片用海綿骨スクリューで後内側方向から固定する[1] 。スクリューの位置は術中のX線撮影や透視で確認する[1]
代替:前方からの経皮的スクリュー固定: 大きな骨片では最小切開(stab incision)で前方から後方へラグスクリューを挿入する。type Bの骨片は脛骨の後外側角に位置するため、スクリューはそれに応じた方向へ挿入する[1]
最終確認: 正面・側面・モーティス像で後果の整復位と関節面を確認し、術中にX線撮影や透視でスクリューの位置を確認する[1]
後果(Volkmann骨片)固定 — 後外側アプローチ・ラグスクリュー固定の術中所見と透視像(側面・横断面CT比較)
⚠️ 後果固定 ピットフォール
✕ 後果スクリューの関節内迷入 — 術中にX線撮影や透視でスクリューの位置を確認する[1] ✕ 後果骨片の過小評価 — 骨折線が不整なため単純X線では骨片の大きさを正確に評価できず、CTで大きさ・位置・向きを確認する[2] ✕ 後方アプローチ時の腓骨筋腱の扱い — 外側の皮膚弁を挙上し、腓骨筋腱を前方に牽引して腓骨を後方から展開する[1] ✕ 後外側(Volkmann三角)骨片は後脛腓靱帯によって外果と結合しているため、外果に伴って転位することが多い[1] ✕ 前方からのスクリューの方向と長さ — 後方骨片が小さい場合は前方骨片をオーバードリリングし、3.5 mmの皮質骨スクリューで後方骨片を圧迫固定する[1]
術後管理
術後X線正面像・側面像・モーティス像 — 腓骨プレート+後果スクリューによる固定。距骨位置・後果整復・足関節モーティスの回復を確認
手術タイミング: 受傷後6〜8時間以内に手術を行えば腫脹の大半は血腫で、一次閉創が可能。浮腫や水疱が生じた場合は、軟部組織が回復するまで少なくとも4〜6日間手術を延期する。骨折水疱の消失、擦過傷の上皮化、皮切予定部位のしわの出現が目安[1]
術後荷重: 荷重は内固定の安定性と患者の協力度に大きく左右される。早期に可動域運動を開始した群はより早く完全復帰できたが、6週間ギプス固定のまま段階的に荷重を増やした群でも著者らは特に問題を経験しておらず、この時期を過ぎれば自動運動と全荷重を許可する[1]
VTE予防: リスクに応じて予防法を検討する
疼痛管理: 多モード鎮痛(アセトアミノフェン定期投与・NSAIDs・局所浸潤麻酔)。区域麻酔(脛骨神経ブロック・腓骨神経ブロック・膝窩ブロック)を術後疼痛管理に活用
リハビリテーション: 早期から股関節・膝・足趾の自動運動を開始し、術後24〜48時間で創に問題がなければ理学療法士の指導下で足関節の自動運動を始める[1] 。荷重は内固定の安定性と患者の協力度に応じて段階的に増やす[1]
フォローアップ
術後2週: 創部確認・X線撮影(整復位維持・インプラント位置)
術後6週: X線撮影(骨癒合初期兆候・後果整復位の維持)。荷重量の調整検討
術後10〜12週: X線撮影(骨癒合判定・全荷重開始の評価)。足関節可動域測定
術後6ヶ月: X線撮影(骨癒合完成・足関節アライメント確認)
術後12ヶ月: X線(変形性足関節症の早期評価)。足関節機能スコア(AOFAS等)での評価
予後
骨癒合:後果骨片を伴う足関節骨折131例(平均6.9年追跡)で偽関節は無かった[3]
外傷後変形性足関節症:後果骨片が5%を超える例では、術後の脛距関節面の段差1mm以上で変形性関節症が増え(41%対61%)、骨片の固定の有無は発生に影響しなかった[3]
骨片の大きさ・段差と臨床成績:骨片の大きさや術後の段差で変形性関節症の頻度は変わったが、臨床スコアに差はなかった[3]
足関節可動域:術後の評価項目として、健側と比べた背屈制限を用いた研究がある[3]
主要合併症:創傷治癒の問題と感染(糖尿病患者では合併症の発生率がはるかに高く、末梢神経障害の患者ではCharcot関節症に注意)[1] ・外傷後変形性足関節症[3]
📋 上級医報告前チェックリスト
1 AO分類コードを確認(44-A = 靱帯結合より遠位での腓骨損傷。44-A3に伴う後内側骨片は内果骨片に隣接する)[1] 2 後果骨片の大きさ・位置・向きをCTで評価(単純X線では大きさを正確に評価できない)[2] 。側面像で全関節面の25%未満・距骨の後方亜脱臼傾向なしなら固定不要とする基準は、type B(稀にtype C)の後外側骨片についての記載[1] 3 足関節安定性の評価(ストレス撮影は完全な麻酔下で健側と比較する場合にのみ有用。回外-内転骨折で脛骨関節面内側の嵌入が疑われればCTで確認)[1] 4 脛腓靱帯結合の安定性評価(腓骨固定後、術中の外旋ストレスで内側関節裂隙が2mm以上開大すれば不安定を疑う)[1] 5 足部の神経血管損傷の評価を記録(外側進入で注意する浅腓骨神経・腓腹神経の所見を含む)[1] 6 腓骨長と回旋の整復確認(X線透視下で脛骨天蓋と外果の高さの関係、または健側と比べた距腿角で確認する)[1] 7 後果スクリューの関節内非迷入を術中のX線撮影・透視で確認[1] 8 術後荷重スケジュール確認(荷重は内固定の安定性と患者の協力度で決める。6週間ギプス固定のまま段階的に荷重を増やし、その後に自動運動と全荷重を許可する方法がある)[1] 9 VTE予防薬の処方確認
文献
Buckley RE, Moran CG, Apivatthakakul T(編)(2018)AO Principles of Fracture Management(第3版). Thieme.(日本語版:AO法骨折治療 第3版、医学書院、2020) DOI: 10.1055/b-006-149767
Haraguchi N, Haruyama H, Toga H, Kato F(2006)Pathoanatomy of posterior malleolar fractures of the ankle. J Bone Joint Surg Am, 88:1085–92. PMID: 16651584
Drijfhout van Hooff CC, Verhage SM, Hoogendoorn JM(2015)Influence of fragment size and postoperative joint congruency on long-term outcome of posterior malleolar fractures. Foot Ankle Int, 36:673–8. PMID: 25672944
Gardner MJ, Streubel PN, McCormick JJ, et al.(2011)Surgeon practices regarding operative treatment of posterior malleolus fractures. Foot Ankle Int, 32:385–93. PMID: 21733441