脛骨外側プラトー(脛骨高原)の関節面が陥没した部分関節内骨折。AO分類41-B2に相当する。外側顆関節面の一部または全体が圧迫により陥没(depression)し、側方への割れ(split)を伴うのが典型であるが、純粋陥没型では骨折周囲の外側壁が一塊のまま陥没する。関節面の整復精度(≦2mm)と骨欠損部への骨移植が転帰を左右する。外側側副靱帯・前十字靱帯・半月板損傷を高率に合併するため、MRIによる軟部組織評価が術前必須。
重症度・疫学
年間発生件数(日本): 脛骨プラトー骨折(41-B/C)は脛骨骨折全体の約8〜10%。41-B2はそのうち最も多いサブタイプの一つ
好発: 40〜60歳代の活動的成人。高齢骨粗鬆症患者でも発生
受傷機転: 低〜中エネルギー外傷(側方からの膝外反力 + 軸圧)が主体。交通事故・転落・スポーツ外傷。歩行者-自動車事故では外側プラトーへの直接打撃が多い
Schatzker分類との対応: 41-B2はSchatzker III(外側プラトー純粋陥没型)に対応する。Schatzker IV は内側プラトー骨折(内側顆骨折)であり、外側プラトー陥没型(41-B2)と混同しないこと。Schatzker II(外側プラトーsplit+depression)は41-B3に近い型に相当する
注意すべき合併症
- 外傷後変形性膝関節症:関節面不整合が残存した場合に高率(陥没2mm超で発症率が有意に上昇)
- 外側側副靱帯・後外側複合体損傷:約30〜40%に合併
- 前十字靱帯損傷:約20〜30%に合併
- 外側半月板損傷:約50〜70%に合併(修復可能なものは同時手術を考慮)
- コンパートメント症候群:高エネルギー損傷では約4〜8%
- 腓骨神経損傷:外側からの強い外反力で合併することがある
- DVT/PE:術後予防必須
- 骨移植部の骨吸収:自家骨移植でも一定割合で生じる
治療方針
⚠️ 保存療法の適応条件
- →関節面陥没 ≦2mm かつ内反/外反不安定性 ≦10°(完全伸展位)かつ靱帯損傷なし
- →高齢者・低活動性で外科的リスクが高い場合に限定
- →週1回の早期X線追跡で転位進行を監視(特に6〜8週)
- →原則として手術が推奨される(陥没型は保存療法での関節面回復が期待できない)
🔷 手術適応基準・術式選択
- ℹ関節面陥没 >2mm または膝関節内反/外反不安定性
- ℹ外側側副靱帯・前十字靱帯損傷の合併
- ℹ外側半月板の嵌入(関節内脱臼)
- ℹ第一選択:ORIF(外側プラトー解剖型ロッキングプレート+骨移植)
- ℹ陥没骨片の挙上 → 骨欠損部に自家腸骨移植または骨代替材(β-TCPなど)を填充 → ラフトスクリュー+外側プレート固定
- ℹ皮膚状態が不良(高エネルギー損傷・腫脹強度)では一時的外固定(創外固定)→ 二期的ORIF(軟部組織回復後)
治療選択アルゴリズム — 陥没量・不安定性に基づく保存vs手術の選択フロー
診断・評価
膝関節の腫脹(血腫)・疼痛・荷重困難が主訴。関節穿刺で脂肪滴を含む血腫が吸引できれば関節内骨折のサイン。外反不安定性(valgus stress test)・前方引き出し(Lachman test)・半月板の圧痛を必ず確認する。
X線: AP像・側面像・内外斜位像(40°外回転斜位が外側プラトーを明瞭に描出)。陥没量・骨片の転位・関節線の傾きを評価。
CT: 骨折形態の三次元評価に必須。陥没の深さ・範囲・split fragmentの大きさを正確に把握する。
MRI: 靱帯・半月板損傷の評価に必須。術前に施行して軟部組織合併損傷の修復計画を立てる。
X線AP・斜位像(外側プラトー陥没・外側壁の変化)+CT冠状断(陥没深さと骨欠損域の評価)
CT3D再構成(外側プラトー陥没・split fragmentの全体像)
✅ 許容される整復
- ✓関節面陥没残存 ≦2mm(目標は完全解剖整復)
- ✓外反アライメント誤差 ≦5°
- ✓ラフトスクリュー(raft screws)が関節軟骨下骨直下(軟骨下骨5mm以内)に配置されている
- ✓骨欠損部に骨移植が充填され、支持が確保されている
❌ 許容されない変形
- ✕関節面陥没残存 >2mm(外傷後変形性膝関節症の強い予測因子)
- ✕外反アライメント誤差 >5°
- ✕骨欠損部への骨移植不足(ラフトスクリューが沈み込みリスク)
- ✕プレートが外側プラトー縁(rim)から離れた位置に設置(buttress効果不十分)
- ✕外側半月板の嵌入見落とし
手術手技
体位
仰臥位(supine): 患肢側に小さなターニケット(大腿近位)。膝関節を屈曲30〜60°に保てるよう骨盤下にバンパーを敷く。術中透視(Cアーム)がAP・側面の双方で入れられることを確認する。止血帯を使用する場合は関節面整復時に合わせて解放することが多い。
手術体位・Cアームセットアップ — 仰臥位・膝屈曲ポジション
ORIF(外側プラトー解剖型ロッキングプレート+骨移植)— 第一選択
適応: 関節面陥没 >2mm、および/または外反不安定性・靱帯損傷合併例。
外側アプローチ解剖図 — 腸脛靱帯切開・外側関節包・半月板下関節切開(submeniscal arthrotomy)
- 外側皮膚切開: 外側膝蓋骨縁から脛骨粗面外側にかけて直線切開(またはCurvilinear切開)
- 腸脛靱帯・外側関節包切開: Gerdy結節を識別し腸脛靱帯を縦切開。外側半月板下で関節切開(submeniscal arthrotomy)を行い、外側プラトーを直視できる視野を確保する
- 関節面の評価: 血腫を除去し、陥没・split・半月板損傷の有無を直視で確認する
- Cortical window(皮質骨窓)の作製: 外側壁の骨折線から近位または外側に皮質骨窓を開き(または骨折splitを利用し)、陥没した関節面骨片へのアクセスルートを確保する
- 骨片の挙上: 骨タンパー・骨エレバーを皮質骨窓より挿入し、陥没した関節面骨片を解剖的位置に挙上する。透視・直視で関節面の平坦性を確認する
- 骨欠損部の填充: 挙上後の骨欠損部(void)に自家腸骨移植(または人工骨代替材:β-TCP、HA等)を填充し、支持を確保する
- ラフトスクリュー仮固定: 挙上した関節面骨片をKワイヤー、次いで部分ねじ山スクリュー(raft screws)で軟骨下骨直下に固定。透視でスクリューが関節面下5mm以内に位置することを確認
- 外側プレート設置: 解剖型ロッキングプレート(外側脛骨近位プレート)をGerdy結節直後に沿わせ、近位部にロッキングスクリューを配置。プレートが外側皮質に密着し外反buttress効果を発揮していることを確認する
- 半月板修復(必要に応じて): 同時施行が望ましい(外側半月板の修復可能損傷)
- 透視最終確認: AP・側面像で整復位・スクリュー位置・プレート位置を確認。関節線の対称性・外反アライメントを評価する
ORIF手技概念図 — 骨窓作製・骨片挙上・骨移植填充・ラフトスクリュー+外側プレート固定
⚠️ ORIF ピットフォール
- ✕骨片挙上不足による関節面陥没残存(>2mm)— 術中透視だけでなく直視による確認も必須
- ✕骨欠損部への骨移植不足 → ラフトスクリューの沈み込み(late subsidence)
- ✕外側半月板の嵌入見落とし(submeniscal arthrotomyで必ず直視確認)
- ✕プレート近位端が外側プラトー縁から遠位に設置される → buttress効果が不十分
- ✕ラフトスクリューが関節面を穿破(透視の軸位像でも確認)
- ✕後外側骨片(posterolateral fragment)の見落とし — CT事前確認が必須
創外固定+二期的ORIF — 代替選択肢(高エネルギー損傷・軟部組織不良例)
適応: 高エネルギー損傷で著明な軟部組織腫脹・水疱(fracture blister)・開放創がある場合。初期に関節外固定(外固定器による仮固定)を施行し、軟部組織の回復(通常7〜14日)後に根治的ORIFを行う。
術後管理
術後X線像(AP・側面)— 外側プレート固定・ラフトスクリュー・骨移植後の関節面整復位
手術タイミング: 軟部組織の状態が許容できれば受傷後24〜72時間以内が理想(皮膚皺・pinch testが可能)。高エネルギー例は一時的創外固定→二期的ORIF
術後荷重: 術後6週はNWB(完全免荷)または toe-touch weight-bearing。骨移植の填充・陥没量・骨質に応じて判断。部分荷重は術後6〜8週から段階的に移行し、骨癒合確認後(術後10〜12週)に全荷重を許可する
VTE予防: エドキサバン(リクシアナ)または低分子ヘパリンを術後12〜24時間より開始
疼痛管理: アセトアミノフェン定期投与を基本とし、NSAIDsは骨移植後の骨癒合への影響を考慮して短期使用にとどめる。大腿神経ブロックを補助的に使用
リハビリテーション: 術翌日からCPM(passive motion)開始。膝関節屈伸の早期可動域訓練(荷重なし)を積極的に行う。大腿四頭筋・腸脛靱帯のストレッチを並行して実施
フォローアップ
- 術後2週: 創部確認、X線(整復位・プレート位置)
- 術後6週: X線(骨癒合初期兆候、陥没二次転位の有無)、荷重量の評価
- 術後12週: X線・必要に応じてCT(骨移植の填充・骨癒合)、荷重プログレッション
- 術後6ヶ月〜1年: 膝関節機能評価(KOOS・Lysholm score)、変形性関節症の評価
予後
外側プラトー骨折(41-B2)の予後は関節面整復の精度に大きく依存する。
- 骨癒合率:約90〜95%(適切なORIFと骨移植施行例)
- 外傷後変形性膝関節症:陥没残存2mm超の場合に発症率が有意に上昇(長期で約20〜30%)
- 外傷後変形性膝関節症(解剖整復達成例):長期追跡で約10〜15%
- 膝関節可動域:屈曲130°以上が目標。早期CPMで改善が期待できる
- 合併靱帯損傷・半月板損傷の修復が長期予後を改善する
📋 上級医報告前チェックリスト
- 1AO分類コードを確認(41-B2 = 脛骨近位部・部分関節内・外側プラトー陥没型)
- 2CT必須(陥没深さ・骨欠損範囲・後外側骨片の確認)
- 3MRI必須(外側側副靱帯・前十字靱帯・外側半月板損傷の評価)
- 4関節面陥没量と外反不安定性を評価(手術適応の判断:陥没>2mmまたは不安定性>10°)
- 5軟部組織の状態を評価(一期的ORIF vs 二期的ORIF の判断)
- 6骨移植材の術前準備(自家腸骨・骨代替材の選択)
- 7外側半月板の修復計画(術中submeniscal arthrotomyで必ず確認)
- 8術後荷重プロトコルの確認(骨移植填充量・骨質に応じた荷重制限:6〜8週NWB/部分荷重)
文献
- Buckley RE, Moran CG, Apivatthakakul T(編)(2018)AO Principles of Fracture Management(第3版). Thieme.(日本語版:AO法骨折治療 第3版、医学書院、2020) DOI: 10.1055/b-006-149767
- Schatzker J, McBroom R, Bruce D(1979)The tibial plateau fracture: the Toronto experience 1968-1975. Clin Orthop Relat Res, 138:94–104. PMID: 445923
- Barei DP et al.(2004)Fractures of the proximal tibia. Orthop Clin North Am, 35:617–28.
- Lansinger O et al.(1986)Tibial condylar fractures: a 20-year follow-up. J Bone Joint Surg Am, 68:13–19. PMID: 3941115