脛骨外側顆(外側プラトー)が垂直方向に分割される純粋split骨折。AO分類41-B1(部分関節内・単純split)のうち外側プラトーのものに当たる(41-B1には頻度は低いが内側の単純splitも含まれる)[5]。骨質が良好な若年者に多く、外側コンパートメントへの外反力(valgus stress)によって生じる(軸圧が加わると陥没を伴いやすい)[5]。内側プラトーは温存される。転位があり不安定で、正常に近い下肢アライメントが見込めない場合に手術を考える。
重症度・疫学
頻度: 脛骨プラトー骨折の中でSchatzker I型(純粋split)は比較的少ない。過去の症例集積では全体の3〜6%程度と報告される(Schatzker: 70例中4例、Hohl: 3%)[5]
好発: 骨質が良好な若年者に多い。骨量が減少した高齢者では圧迫(陥没)の要素が大きくなり、split骨片は目立たなくなる[5]
受傷機転: 転倒やねじれによる低エネルギー外傷で生じることが多い。若年者ではスポーツなどによる比較的高速の外傷でも生じる[5]
Schatzker分類との対応: 41-B1はSchatzker I(純粋外側split)に相当する[5]。外側プラトーの純粋split骨折であり、陥没を伴わない点でSchatzker II(split+depression)とは異なる[7]
注意すべき合併症
- 外側半月板損傷:手術を受けた脛骨プラトー骨折103例のMRIで約91%、手術中に関節鏡で評価した例では半月板損傷(内外側を区別せず)が約57%に合併(純粋split型に限定した頻度データは無い)[5]
- 前十字靱帯(ACL)損傷:手術を受けた脛骨プラトー骨折103例のMRIで約77%、手術中に関節鏡で評価した例では約25%に合併(純粋split型に限定した頻度データは無い)[5]
- 側副靱帯損傷:手術中に関節鏡で評価した報告で、外側側副靱帯(LCL)・内側側副靱帯(MCL)とも約3%に合併[5]
- 腓骨神経損傷(腓骨頭周囲):低エネルギー受傷(純粋split型)では稀。外側からの直達外力や高エネルギー損傷では注意[5]
- コンパートメント症候群:高エネルギー外傷で起こりやすい。疑えばコンパートメント内圧を測定し、臨床所見で診断が明らかなら筋膜切開を行う[5]
- 外傷後変形性膝関節症(Honkonen の報告では、半月板切除・下肢アライメント不良で増え、関節面のstep-offとの相関は乏しい)[5]
- DVT/PE
治療方針
⚠️ 保存療法
- →大きな変形なく治ると見込める骨折、または手術のリスクが高く(重い併存症・骨量の減少した高齢者など)変形が臨床的に許容できる場合は、保存療法の良好な成績も踏まえて選択する[5]
- →参考(昔の保存療法例の成績):保存療法例の報告では、陥没または幅の拡大10mm未満(Waddell)、幅の拡大5mm・step-off 3mmまで(Honkonen。内側の転位・傾斜は避ける)がおおむね許容された。昔の報告は今の保存療法例より悪い側の見積もりとされ、純粋split型の適応基準ではない[5]
- →通常4〜8週のNWB(完全免荷)。期間は骨折型による[5]
- →転位の mm を目安にする報告もある:転位3mm以下の minimally displaced type は保存療法の対象(早期リハビリ目的で手術することもある)、陥没は5mm以上を残すと手術による整復が必要、若年・壮年では位置や範囲を考慮して3mm程度の陥没でも手術を選ぶ(5mm・3mm程度は陥没についての値)[6]
🔷 手術適応基準・術式選択
- ℹ手術適応:転位があり不安定で、骨折型と診察から正常に近い下肢アライメントが見込めない場合。外側では、大きく転位したsplit骨折を治療しないと外反アライメントになりやすい[5]
- ℹ膝関節不安定性:伸展位で10°を超える冠状面不安定性を手術の基準にした保存療法の報告がある。ただし受傷直後の膝では不安定性を確実に評価しにくいとされる[5]
- ℹ最も一般的な方法:経皮的スクリュー固定(透視または関節鏡で整復を確認する)。スクリューだけで固定するには、split骨片を圧迫して転位を防げることが前提[5]。支持プレート・ラグスクリュー・その併用が最も頻用されるとする教科書もある[1]
- ℹスクリュー方向:骨折面に対して垂直(圧迫・安定性のため)[5]
- ℹプレートの要否:純粋split骨折ではプレート固定は必要ないとする立場があり、屍体実験でもスクリュー単独とバトレスプレート併用で差が無かったとされる[5]
- ℹ関節鏡・半月板の扱いは原典で見解が分かれる。関節鏡はほとんど用いず、半月板損傷は定型的に評価・処置しなくても転帰は変わらないとする立場がある[5]
- ℹ一方、脛骨プラトー骨折を基本的に鏡視下に整復内固定し、整復に先立って十字靱帯・半月板などの軟部組織を評価する立場もある(陥没を伴う外側プラトー骨折の手順として記載)[6]
- ℹ一時的な関節をまたぐ創外固定:著しい転位・短縮・関節の亜脱臼を伴う重症例に限り、通常の外側プラトー骨折ではまれにしか要さない[5]。高エネルギー骨折の報告では、軟部組織の回復を助けるとされる[3]
診断・評価
膝関節の疼痛・腫脹・外反変形・荷重不能を呈する。関節内血腫(hemarthrosis)は関節内骨折の重要サイン。X線は正面像・側面像と、プラトー面に合わせた正面像(10〜15°尾側に傾けた像)が標準とされる[5]。CTは単純X線より主な骨折面を正確に示し[4]、限られた展開で固定する場合の術前計画には欠かせないとされる[5]。
すべての例で神経血管の診察を十分に行う。腓骨神経は腓骨頸部の後面を走行する[5]。
✅ 許容される整復
- ✓整復の目標:関節面の整復の質が転帰を左右するとする報告と、下肢アライメントが最も重要で、整列した下肢では関節面の段差の影響は小さいとする報告がある[5]
- ✓split骨片の整復により、下肢アライメント・関節の安定性・関節面の適合性が回復している[5]
- ✓下肢アライメント:近位での5°の内外反でも Mikulicz 線の膝通過位置が約20%ずれるため、軽度の角度変形も矯正されている[6]
- ✓骨折面全体にスクリューが骨折線を越えて固定されている
❌ 許容されない変形
- ✕下肢のアライメント不良につながる大きな関節面の転位の残存[5]
- ✕split骨片が圧迫されず、固定後も骨片が転位しうる状態[5]
- ✕スクリューが関節面を穿破している
- ✕split骨片が整復されておらず、下肢アライメント・関節の安定性・関節面の適合性が回復していない[5]
- ✕5°を超える下肢アライメント不良の残存(手術例の5〜27年の追跡で関節症27%対9%)[5]
手術手技
体位
仰臥位(ボルスター使用): Cアームでプラトーの正面像・側面像が十分に得られることを確認しておく[6]。Cアームは患肢の反対側に置く。患側臀部にボルスターを置き膝蓋骨が正面を向くよう調整する。止血帯を大腿部に装着する。
経皮的スクリュー固定
適応: 外側プラトーの純粋split骨折は、透視または関節鏡で整復を確認する低侵襲手技の最もよい適応とされ、経皮的に刺入したカニューレイテッドスクリューのみで固定できることが多い[5]。
- 術前計画: CTで骨折線の位置と走行を確認し、整復鉗子の当て方とスクリューの刺入方向を計画する
- 整復: 両プラトー間にまたがる大型の整復鉗子でsplit骨片を整復し、圧迫する
- 整復の確認: 透視または関節鏡で関節面の整復を確認する(どちらを好むかは術者によって分かれ、骨折型で使い分ける術者もいる)[5]
- スクリュー固定: 部分ねじのスクリューを骨折面に垂直に経皮的に刺入し、骨片間を圧迫して固定する。圧迫には部分ねじのスクリューが最も一般的で、6.5mmスクリューは主な骨折線によく効くが、より細いスクリューでも同等に機能しうるとされる[5]
- 透視による最終確認: AP・側面像でプラトーの幅・関節面の一致・スクリュー位置・関節面非穿破を確認
⚠️ 整復・固定のピットフォール
- ✕スクリュー方向の誤り(骨折面に垂直でないと圧迫と安定性が得られにくい)[5]
- ✕スクリューの関節面穿破(対側軟骨損傷・疼痛)
- ✕split骨片の整復不十分(骨折の転位による不安定性は、整復しないと残る)[5]
- ✕腓骨神経への損傷(腓骨頸部の後面を走行する。腓骨の位置を意識していればほとんどの手術で危険は小さいが、後外側から進入するときは同定して授動する)[5]
プレート固定(外側アプローチ)
適応: スクリュー単独ではsplit骨片を圧迫して転位を防げない場合に考慮する[5]。長いsplitでは前外側のバットレスプレートを追加するとする立場もある[4]。プレート固定には開創を要し、インプラントもかさばる[5]。
術後管理
手術タイミング: 水疱・強い腫脹・深い挫傷は重い軟部組織損傷の徴候で、回復には数日〜数週かかり、強い腫脹のある時期の開創は創合併症のリスクが高い。低エネルギー骨折では待機の重要性は低く、必要なら膝を副子固定して待てる[5]
術後荷重: 整復位の転位を防ぐため、非荷重または最小荷重の期間をおく。固定強度や骨折型によるが、荷重を進め始めるのは術後6〜12週の間が多いとされる[5]。一方、鏡視下整復と骨移植・スクリュー固定を行った外側プラトー単独骨折(主に陥没を伴う型)で、術後3週から部分荷重・5週で全荷重とする報告もある[6]
疼痛管理: 痛みに応じて鎮痛薬を用いる
リハビリテーション: 固定強度が許せば早期の可動域訓練を行うのが標準的である。理学療法が役立つ患者もいるが、理学療法プログラムが可動域を改善するというデータは無いとされる[5]。
フォローアップ
予後
- 骨癒合:脛骨プラトー骨折の大半は問題なく癒合する[5]
- 外傷後変形性膝関節症:Honkonen の報告では、半月板切除・下肢アライメント不良で増え、関節面のstep-offとの相関は乏しい[5]
- 膝関節可動域:手術例202例の1年時点の平均は130°(範囲10〜145°)との報告がある[5]
- 半月板:41-B(特に外側プラトーの local/split compression)では陥没関節面近くの狭い範囲の辺縁断裂が多く、関節面を解剖学的に整復すれば半月板も整復位に収まり、必ずしも縫合せず温存できたとの鏡視下手術の経験がある。一方、41-C3.3(内側の剪断骨折に外側プラトーの陥没を伴う型)では外側半月板が辺縁から全周にはがれ骨折部にはまり込む例があり、修復を要する[6]
- 主要合併症:低エネルギーの脛骨プラトー骨折は重篤な合併症のリスクが低い。外側プラトー骨折の手術例の1報告では、術後に整復位の一部を失ったのが31%(60歳を超える例では79%)で、より新しい固定法で減る可能性があるとされる[5]
📋 上級医報告前チェックリスト
- 1AO分類コードを確認(41-B1 = 脛骨近位部・部分関節内・単純split。本項はそのうち外側プラトーのもの)[5]
- 2CTで骨折線の位置と走行を確認する(単純X線より主な骨折面を正確に示す)[4]
- 3手術適応の確認(転位・不安定性・予想される下肢アライメントで判断する。関節面の転位の mm を閾値にするかは見解が分かれ、あらかじめ決めた mm 数で決めるのは妥当でないとする立場がある[5])
- 4外側半月板損傷の合併が多いことを念頭に置き、関節鏡で評価するかの方針を決めておく
- 5腓骨神経損傷の有無を評価(背屈・外反筋力・感覚)
- 6スクリュー方向の計画(骨折面に垂直・関節面を穿破しない)
- 7split骨片の整復により、下肢アライメント・関節の安定性・関節面の適合性が回復していることを確認[5]
- 8術後荷重プランを確認(免荷の期間と、荷重を進める時期)
文献
- Buckley RE, Moran CG, Apivatthakakul T(編)(2018)AO Principles of Fracture Management(第3版). Thieme.(日本語版:AO法骨折治療 第3版、医学書院、2020) DOI: 10.1055/b-006-149767
- Schatzker J et al.(1979)The tibial plateau fracture: The Toronto experience 1968–1975. Clin Orthop Relat Res, 138:94–104.
- Berkson EM, Virkus WW(2006)High-energy tibial plateau fractures. J Am Acad Orthop Surg, 14(1):20–31. PMID: 16394164
- Kfuri M, Schatzker J(2018)Revisiting the Schatzker classification of tibial plateau fractures. Injury, 49(12):2252–63. PMID: 30526924
- Marsh JL(2010)Tibial Plateau Fractures. Bucholz RW, Heckman JD, Court-Brown CM, Tornetta P(編)Rockwood and Green's Fractures in Adults(7th ed), 第53章, pp1781–1831. Lippincott Williams & Wilkins.
- 徳永真巳(2013)脛骨近位端骨折(鏡視下整復内固定、ACL/PCL裂離骨折). Monthly Book Orthopaedics, 26(11)(特集「下肢骨折治療基本手技」):113–128. 出版社: https://www.zenniti.com/im/583.html
- 大森俊行(2014)脛骨プラトー骨折[Schatzker分類]. 『骨折の分類とシェーマ一覧』(「救急・当直で必ず役立つ!骨折の画像診断 改訂版」購入者特典 Ver.1.0), 第9章4, p59. 羊土社. 出版社: https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758111775/