足関節外果(腓骨遠位部)の骨折で、骨折線が脛腓靭帯結合(syndesmosis)の高さに位置する型(AO 44B)の外果単独骨折である。前脛腓靭帯の部分断裂を合併することがあり、内側の損傷を伴わず転位のない外果単独骨折は距腿関節窩の適合性が維持されていれば保存的治療が可能だが、三角靭帯損傷に明らかな距腿関節窩の転位を伴う場合は腓骨の手術的安定化が必要となる[1]。
重症度・疫学
年間発生件数(日本): 足関節骨折全体は約150〜200/100,000/年。このうちAO 44-B型(trans-syndesmotic型)が最多で全足関節骨折の約40〜50%を占め、44-B1(孤立性)はその中の半数前後
好発: 足関節骨折は若年男性と高齢女性に多い。若年男性では主にサッカーなどのスポーツ外傷、高齢女性では単純な転倒やねじれによる受傷が多い[2]
受傷機転: 足部回外位での受傷が主体。内返しの動作で距骨が外旋し、最初に腓骨が破綻して、足関節のレベルから始まり前方から後上方に及ぶ斜骨折が生じる[1]
治療方針: 内側の損傷を伴わず転位のない外果単独骨折は保存的治療が可能。三角靭帯損傷はX線ストレス撮影、または短期間(1週間)荷重したのちのX線再撮影でより正確に評価できる[1]
注意すべき合併症
- 足関節不安定性の見逃し(内側構造損傷の評価不十分が原因)
- 外傷後変形性足関節症(関節不整合・慢性不安定性が原因)
- 内固定材の抜去を要すること・手術瘢痕の圧痛[2]
- 創部感染・創傷合併症(糖尿病・末梢血管疾患の患者では合併症のリスクが高い)[2]
- 浅腓骨神経・腓腹神経損傷(外側進入時に注意)[1]
- 深部静脈血栓症・肺塞栓症[2]
- 脛腓靭帯結合損傷の残存(慢性シンデスモーシス不安定性)
- 遷延癒合・神経障害性の偽関節(糖尿病・末梢神経障害の患者)[1]
治療方針
⚠️ 保存療法(安定型に適応)
- →安定型の基準:内側の損傷を伴わず転位のない外果単独骨折で、距腿関節窩の適合性が維持されている[1]
- →早期から機能的な治療と全荷重を行う[1]
- →短期間(1週間)荷重したのちにX線を再撮影し、三角靭帯損傷を評価する[1]
- →高齢者の不安定な足関節骨折では、6か月時のギプス固定とORIFの成績が同等であったとする無作為化臨床試験がある[1]
- →距腿関節窩の適合性のわずかな障害でも接触面積が減り、関節軟骨に過剰な負荷がかかる可能性がある[1]
🔷 手術適応基準・術式選択
- ℹ不安定型の基準:いずれかの単純X線像で有意な距骨偏位(通常、内側クリアランスが上方クリアランスに比べて1〜2 mmを超えて増大)を伴う外果骨折[3]
- ℹ標準:ラグスクリュー+1/3円プレート(保護プレート)。骨粗鬆症で軸方向に安定した腓骨骨折、特に軟部組織の状態が悪い場合は非観血的整復と髄内固定も選択肢[1]
- ℹ短斜骨折 → 3.5 mm皮質骨ラグスクリューで圧迫固定し、1/3円プレートで保護する[1]
- ℹ斜骨折・螺旋骨折 → 2.7 mmか3.5 mmの皮質骨ラグスクリューを前後方向に挿入し、1/3円プレートを保護プレートとして用いる[1]
- ℹ三角靭帯損傷に明らかな距腿関節窩の転位 → 腓骨の手術的安定化。腓骨整復後も内側関節裂隙の開大が残存する場合は内側を展開し、嵌頓した組織を除去して三角靭帯を修復する[1]
- ℹ脛腓靭帯結合の不安定性(フックテスト、術中の外旋ストレス下X線透視で内側関節裂隙が2 mm以上開大)→ ポジショニングスクリュー追加[1]
- ℹ開放骨折 → ほとんどの例では、すべての開放創のデブリドマン後に距腿関節窩の解剖学的整復と安定した固定を行う。開放創は閉創せず患肢を挙上し、48〜72時間後に「second look」を行う[1]
治療選択アルゴリズム — 安定性評価(ストレスX線・MRI)→保存療法 vs 手術(プレート or 髄内釘)の選択基準
診断・評価
外果周囲の腫脹・圧痛・荷重困難を呈する。理学所見では開放創・腫脹・変形・打撲・圧痛をみる。三角靭帯の損傷は内側の圧痛などの臨床所見で判断するが、内側の軟部組織の状態は不安定性の正確な指標とならないことがある。足部の神経血管損傷を注意深く評価する[1]。
X線正面像・Mortise view・側面像: 3方向が必要。腓骨の短縮は脛骨天蓋と外果の軟骨下骨層の段差で評価し、距腿角は83±4°。距骨と脛骨天蓋間の関節裂隙は内果と距骨内側の間隔と等しい。側面像で腓骨骨折の形態と距骨の前後方向の偏位をみる[1]。
ストレスX線: 内側に圧痛があり単純X線で距骨偏位のない外果単独骨折では、外反ストレス撮影や重力ストレス撮影が三角靭帯損傷の判別に役立つ可能性があるが、手術適応を決める方法としてはまだ広く受け入れられていない[3]。
MRI: 三角靭帯(深層・浅層)・前脛腓靭帯の損傷評価に有用。臨床的に内側損傷が疑われる場合やストレスX線が施行困難な場合に用いる。
術前X線正面像(Mortise view)・側面像 — 脛腓靭帯部高さの腓骨骨折と内側クリアランス評価
44-B骨折分類比較 — B1(孤立性腓骨骨折)vs B2(内果合併)vs B3(内果骨折+後果合併)の3パネル模式図
ストレスX線評価 — 外旋ストレス像での内側クリアランス計測(正常 vs 不安定型の比較)
✅ 許容される整復
- ✓腓骨の長さ回復(短縮なし)
- ✓腓骨の回旋整復(外旋変形の矯正)
- ✓内側関節裂隙が距骨—脛骨天蓋間の関節裂隙と等しい[1]
- ✓距骨傾斜なし(Mortise view で対称性)
- ✓関節裂隙の幅が天蓋—距骨間隙を含め全体にわたり均等で、脛骨天蓋と外果の軟骨下骨層が段差なく連続[1]
- ✓前脛腓靭帯レベルでの腓骨前縁の整復[1]
❌ 許容されない変形
- ✕腓骨の短縮・回旋変形(距腿関節窩の解剖学的構造が再建されない)[1]
- ✕腓骨整復後も残存する内側関節裂隙の開大(内側の展開が必要)[1]
- ✕距骨の偏位(外側に1 mm偏位するだけで距骨—脛骨間の接触面積が平均42%減少する)[2]
- ✕シンデスモーシス不安定性の未評価・未固定
- ✕靱帯結合より近位の腓骨骨幹部骨折(内側側副靱帯と脛腓靱帯結合の両者の損傷を意味する)の見逃し[1]
手術手技
体位
仰臥位(患側殿部下に砂嚢): 患側殿部下に砂嚢を入れて麻酔下の下肢外旋を防ぎ、足部を中間位とする。下腿は柔らかい枕にのせて膝関節を30°屈曲位とし、内側・外側ともに展開しやすくする。止血帯は必ずしも必要ではない。透視装置は側面像と軸位像の撮影時に手術台の遠位から導入する[1]。
手術体位 — 仰臥位・ボルスター設置・透視配置(AP Mortise/側面)。外側アプローチのための患肢設置
腓骨プレート固定(外側アプローチ) — 第一選択
適応: 三角靱帯損傷に明らかな距腿関節窩の転位を伴う場合(腓骨の手術的安定化が必要)[1]
外側アプローチ — 腓骨外側皮質の展開と解剖学的プレート配置(術中透視正面・側面像)
- 外側進入法: 外側プレートを用いる場合は、プレートが縫合部の直下にならないよう、まっすぐな皮切を腓骨のやや前方におく。腓骨前方を走行する浅腓骨神経を損傷しないよう注意する[1]
- 骨折部の展開: 骨折部から距骨円蓋を観察し、遊離した小軟骨片は用手的にまたは洗浄して摘出する。外果遠位部の剥離は最小にとどめる[1]
- 整復(Reduction): 外果の単純な短斜骨折は愛護的な牽引と足部の内旋で整復し、小さな(先端鋭の)整復鉗子で骨折部を仮固定する。整復困難時は、前脛腓靱帯を茎として骨折間隙に回転嵌頓した腓骨近位骨片の先端を探して解除する[1]
- ラグスクリュー固定: 2.7 mmか3.5 mmの皮質骨ラグスクリューを前方から後方へ(あるいは後方から前方へ)挿入して最終固定する。外果の骨幹端部が軟らかい場合は、タップを使用せずに後方から前方に向けて挿入する[1]
- プレート設置: 腓骨外側面の形状に合わせた1/3円プレートを保護プレートとして用い、外果下方のスクリューは関節面を貫かないように挿入する[1]
- 脛腓靱帯結合の評価: 腓骨固定後、術中に外旋ストレス下の透視を行い、内側関節裂隙が2 mm以上開大すれば不安定性を疑う。不安定であれば腓骨から脛骨にポジショニングスクリューを挿入する[1]
- 最終透視確認: 腓骨整復後の術中X線で内側関節裂隙の開大が残存していないかを確認し、残存する場合や腓骨の正確な整復が困難な場合は内側を展開する[1]
⚠️ 腓骨プレート固定 ピットフォール
- ✕腓骨の短縮の見逃し — 脛骨天蓋と外果それぞれの軟骨下骨層のアライメントの段差で評価する[1]
- ✕脛腓靱帯結合の不安定性の未評価 — 腓骨固定後にフックテストで腓骨-脛骨間の不安定性の残存を調べる[1]
- ✕ポジショニングスクリュー挿入時の足関節肢位 — 中間位とする(背屈は必要ない)[1]
- ✕神経損傷 — 外側皮切では腓骨前方を走行する浅腓骨神経に、やや後方の皮切では腓腹神経に注意する[1]
- ✕外果下方へのスクリュー挿入による関節面の穿通 — 外果下方にスクリューを挿入する際は関節面を貫かないように注意する[1]
- ✕ラグスクリューの挿入方向 — 腓骨の斜骨折・螺旋骨折では2.7 mmか3.5 mmの皮質骨ラグスクリューを前方から後方へ(あるいは後方から前方へ)挿入する。外果の骨幹端部は軟らかいことが多く、十分な固定性を得るにはタップを使用せずに後方から前方へ挿入する[1]
腓骨髄内釘(髄内スクリュー / Rush rod系) — 代替術式
適応: 骨粗鬆症の骨で、軸方向に安定している腓骨骨折、特に軟部組織の状態が悪い場合(非観血的整復と髄内固定)[1]
- 非観血的整復と髄内固定: 骨粗鬆症の骨で軸方向に安定している腓骨骨折では、非観血的に整復して髄内固定を行う[1]
- ガイドワイヤー挿入: 透視下に腓骨髄腔内へガイドワイヤーを骨折部を超えて近位骨幹部まで誘導
- 髄内スクリュー刺入: ガイドワイヤーに沿ってソリッドスクリューまたは中空スクリューを挿入。骨折部の整復・長さ回復を確認しながら進める
- 遠位端の固定: 遠位端に横止めスクリューを追加(骨折安定化のため)
- 透視確認: 腓骨の長さが回復・維持されていることを確認する(骨粗鬆症の患者では最重要目標)[1]
術後管理
術後X線正面像(Mortise view)・側面像 — 腓骨解剖学的プレート固定。腓骨長・回旋・内側クリアランス回復を確認
手術タイミング: 受傷後6〜8時間以内に手術を行えば腫脹のほとんどは血腫であり、手術創の一次的閉鎖が可能。浮腫や水疱が生じた場合は、軟部組織が回復するまで少なくとも4〜6日間手術を延期する[1]
術後荷重: 荷重は内固定の安定性や患者の協力度に応じて決め、6週間ギプス固定下で段階的に荷重を増やす方法もある。脛腓結合間スクリューを使用し足関節を固定しない場合は、術後6〜8週間は制限下の荷重のみとする。スクリューの抜去については議論があり、完全な活動復帰前の術後12〜16週で抜去するが、足関節の内側要素と脛腓靱帯結合の両損傷が全く靱帯性だった場合は抜去せず、術後10〜12週は運動制限をする[1]
VTE予防: エドキサバンまたは低分子ヘパリン皮下注を術後12〜24時間から開始(最低14日間。高リスク例では4週間継続)
疼痛管理: 多モード鎮痛(アセトアミノフェン定期投与・NSAIDs・局所浸潤麻酔)。足関節ブロック(腓骨神経ブロック・後脛骨神経ブロック)を術後疼痛管理に活用
リハビリテーション: 早期から股関節・膝・足趾の自動運動を奨励し、24〜48時間で創に問題がなければ理学療法士の指導下で足関節の自動運動を始める[1]
フォローアップ
- 術後24〜48時間: 創に問題がなければ、理学療法士の指導下で足関節の自動運動を始める[1]
- 術後6週: 6週間ギプス固定下で段階的に荷重を増やした場合は、この時期を過ぎれば自動運動と全荷重を許可する[1]
- 術後12〜16週: 脛腓結合間スクリュー使用例は、完全な活動復帰前にスクリューを抜去する(抜去については議論がある)[1]
- 術後6ヶ月: X線撮影(骨癒合完成・足関節アライメント確認)。スポーツ復帰評価
- 長期経過: 成績は時間とともに改善していくが、受傷後24か月までかなりの身体的障害が確認されることが多い[1]
予後
- 不安定型のORIF後:完璧な解剖学的整復と安定した固定が得られても完全な機能的回復が達成できるとは限らず、25%もの患者で満足な結果が得られていない[1]
- 安定型での保存療法:安定型骨折では手術と保存療法で臨床・X線成績に差がみられなかった[3]
- 手術成績:解剖学的整復と安定した固定が得られても完全な機能的回復が達成できるとは限らず、25%もの患者で満足な結果が得られていない[1]
- 外傷後変形性足関節症:距腿関節窩の適合性のわずかな障害でも接触面積が減少し、関節軟骨に過剰な負荷がかかる可能性がある[1]
- シンデスモーシス損傷合併例:遠位脛腓関節の術中の整復不良は珍しくなく、整復不良があると靱帯結合部は正常な張力で治癒せず、慢性的な靱帯結合不安定性が最終結果となる[1]
- スポーツ復帰:術後4〜6ヶ月でジョギング、6ヶ月以降でコンタクトスポーツ復帰が目標
📋 上級医報告前チェックリスト
- 1AO分類コードを確認(44B = 靱帯結合レベルでの腓骨骨折。内側の損傷を伴わない外果単独骨折か)[1]
- 2安定性評価の完了(外果単独骨折では三角靱帯損傷をX線ストレス撮影、または短期間(1週間)荷重後のX線再撮影で評価)[1]
- 3靱帯結合より近位の腓骨骨折の除外(近位の腓骨骨幹部骨折は内側側副靱帯と脛腓靱帯結合の両者の損傷を意味し、大きな不安定性をきたす傾向がある)[1]
- 4内側関節裂隙と距腿角の計測(内果と距骨内側の間隔は距骨と脛骨天蓋間の関節裂隙と等しい。距腿角は83±4°)[1]
- 5神経血管評価(足部の神経血管損傷を注意深く評価)[1]
- 6脛腓靱帯結合の不安定性の評価(術中外旋ストレス透視で内側関節裂隙が2 mm以上開大 — 不安定ならポジショニングスクリュー)[1]
- 7腓骨の長さ・回旋整復の確認(健側との透視比較)
- 8術後荷重スケジュール確認(シンデスモーシス固定追加の有無で異なる)
文献
- Buckley RE, Moran CG, Apivatthakakul T(編)(2018)AO Principles of Fracture Management(第3版). Thieme.(日本語版:AO法骨折治療 第3版、医学書院、2020) DOI: 10.1055/b-006-149767
- Donken CCMA, Al-Khateeb H, Verhofstad MHJ, et al.(2012)Surgical versus conservative interventions for treating ankle fractures in adults. Cochrane Database Syst Rev. PMID: 22895975
- Michelson JD, Magid D, McHale K(2007)Clinical utility of a stability-based ankle fracture classification system. J Orthop Trauma, 21:307–315. PMID: 17485995
- Switaj PJ, Weatherford B, Fuchs D, et al.(2016)Comparison of posterior antiglide plating versus lateral plating with an orthopedic ankle fracture classification system. Foot Ankle Int, 37:41–48.