大腿骨後顆が前頭面(冠状面) で骨折する型で、Hoffa骨折(ホッファ骨折) とも呼ばれる。AO/OTA分類では部分関節内骨折(33-B)に含まれる。単純X線では見逃される可能性があり、関節内骨折では二次元・三次元リコンストラクションを含むCTが推奨される [1] 。
重症度・疫学
頻度: 高エネルギーの顆上・顆間骨折(33-C)では38%に冠状面骨折が合併していた[3]
好発: 自動車事故・オートバイ事故・高所転落などの外傷(顆上・顆間骨折に冠状面骨折を合併した例では自動車事故が最多)[3]
特徴: 単純X線では見逃されやすく、単純X線で同定できた冠状面骨折は69%にとどまった[3]
注意すべき合併症
骨片壊死(後顆への血流が限られる)
外傷後変形性膝関節症
十字靱帯損傷(大腿骨遠位部骨折では側副靱帯損傷より多く、多くは関節内の多骨片骨折に合併する)[1]
DVT/PE
治療方針
⚠️ 保存療法の適応条件
→ 大腿骨遠位部骨折の保存療法は、関節外骨折(type A)で嵌入し転位のないもの、手術が行えない患者、寝たきり患者に限られる[1] → 通常は手術を推奨(保存療法は転位と機能成績不良に関連する)[3]
🔷 手術適応基準・術式選択
ℹ ORIF — 大腿骨遠位部関節内骨折の基本原則は、直視下での関節骨片の解剖学的整復と、ラグスクリューによる骨片間圧迫固定[1] ℹ 進入法:関節内骨折には外側傍膝蓋進入法、内側傍膝蓋進入法、または内側広筋下進入法を用いる[1] ℹ 内側顆Hoffa:外側傍膝蓋進入法に加えて内側広筋下進入法を用いる[1] ℹ スクリュー方向:前方→後方(A→P)。骨折面に垂直(countersunk) ℹ スクリュー種類:関節内骨折では多くの場合3.5 mm皮質骨ラグスクリューまたは3.5 mmキャニュレイテッドラグスクリュー[1] ℹ 骨粗鬆症または垂直骨折線を伴う場合:支持機能をもったプレートでラグスクリュー固定を補強[1] ℹ 両顆型Hoffa骨折:内側Hoffa骨折を含むため、外側傍膝蓋進入法に加えて内側広筋下進入法を用いる[1]
治療選択アルゴリズム(Hoffa骨折)— CT確認→転位量評価→ORIF(A→P方向スクリュー)
診断・評価
CTを推奨 (単純X線では後顆の冠状骨折が見逃される可能性がある)[1] 。矢状断再構成を含むCTは、関節面が完全に断裂していないものを含め、非転位の冠状面骨折を術中の直視よりもよく描出することが多い[3] 。膝靱帯の安定性の検査は骨接合術前には行わず、骨折が安定した後に行う[1] 。
X線側面像(後顆骨片が後方転位)+CT冠状断面(後顆が冠状面で剥離)— Hoffa骨折の診断
✅ 許容される整復
✓ 顆部・関節面の解剖学的再建(正確な再建が必須)[1] ✓ スクリューがcountersunk(関節面から沈下)
❌ 避けるべき操作
✕ スクリューを内外側方向に刺入(骨折面と平行 → 固定力ゼロ) ✕ 単純X線のみで診断(術前に見逃され術中に見つかった冠状面骨折10例は、いずれも術前CT未施行 — CTを推奨)[3] ✕ スクリューの顆間窩への逸脱(十字靱帯損傷)[1] ✕ 診断の遅れ(見逃されることが多く、見逃されるとさらなる転位と関連すると報告されている)[3]
手術手技
体位
仰臥位(膝まくらで膝30〜45°屈曲): 腓腹筋が弛緩する。関節内骨折には外側または内側の傍膝蓋進入法を用い、内側Hoffa骨折では外側傍膝蓋進入法に加えて内側広筋下進入法を用いる[1] 。
ORIF(Hoffa骨折)— 第一選択
Hoffa骨折のORIF — 後方顆骨片を前方に整復し、A→P方向ラグスクリューをcountersunkで固定
外側または内側の傍膝蓋進入法で関節切開する[1]
膝関節内を展開し後顆骨片を直視
直視下で後顆骨片を解剖学的に整復し、クランプで保持する[1]
K-ワイヤで仮固定[1]
3.5 mm皮質骨ラグスクリューまたは3.5 mmキャニュレイテッドラグスクリューで骨片間を圧迫固定[1]
骨粗鬆症または垂直骨折線を伴う場合は、支持機能をもったプレートでラグスクリュー固定を補強[1]
透視(側面像)でスクリュー位置・骨片位置・関節面を最終確認
⚠️ Hoffa骨折 ピットフォール
✕ スクリュー方向の誤り(内外側方向では骨折面と平行 → 固定力ゼロ) ✕ X線のみでの診断(単純X線で同定できた冠状面骨折は69% — CTを推奨)[3] ✕ 骨片壊死の見落とし(後顆への血行は限られる) ✕ 十字靱帯損傷の合併の見落とし(関節内の多骨片骨折に多い)[1] ✕ 両顆の冠状面骨折(内側顆も)の見落とし(顆上・顆間骨折に冠状面骨折を合併した例の24%が両顆)[3]
術後管理
術後X線像(AP/側面)— 大腿骨後顆にA→P方向ラグスクリュー2本(countersunk)。骨片整復位
術後荷重: 単純骨折で骨片同士が接触し内固定が安定していれば、術直後から部分荷重(10〜15 kg)が可能[1]
膝関節可動域訓練: 軟部組織の状態と疼痛管理が十分なら、早くて術後48時間から自動介助運動を開始。CPMも効果的[1]
DVT/PE予防: エドキサバンまたは低分子ヘパリン
フォローアップ
術後2週:X線・創部確認
術後6週:X線(骨癒合初期)
術後6〜12週:仮骨形成がみられれば段階的な荷重を許可[1]
術後6〜12ヶ月:関節症変化の確認
予後:保存治療は転位と不良な機能成績に関連し、手術治療が推奨されている[3]
📋 上級医報告前チェックリスト
1 AO分類コードを確認(33-B3 = 大腿骨遠位部・部分関節内・前頭面Hoffa骨折) 2 二次元・三次元再構成を含むCTで後顆の冠状骨折(Hoffa骨折)を評価[1] 3 ラグスクリュー固定を計画(骨粗鬆症または垂直骨折線を伴う場合は支持プレートで補強)[1] 4 関節面整復目標(直視下での関節骨片の解剖学的整復)[1] 5 十字靱帯損傷の合併を評価[1] 6 内側顆のHoffa骨折も確認(外側顆に多いが内側顆にも生じる)[3] 7 術後6〜12週で仮骨形成を確認し、段階的な荷重を判断[1]
文献
Buckley RE, Moran CG, Apivatthakakul T(編)(2018)AO Principles of Fracture Management(第3版). Thieme.(日本語版:AO法骨折治療 第3版、医学書院、2020) DOI: 10.1055/b-006-149767
Hoffa A(1904)Zur Kasuistik der Knieschussverletzungen. Zentralbl Chir.
Nork SE, Segina DN, Aflatoon K, et al.(2005)The association between supracondylar-intercondylar distal femoral fractures and coronal plane fractures. J Bone Joint Surg Am, 87-A:564–9. PMID: 15741623