Type I(lateral wall pattern): LFL が腸骨大腿靱帯の外側線維束付着部へ向かう。主骨折線は転子部骨折線で、転子部骨折に外側壁骨折を合併した骨折型である[8]
Type II(transverse pattern): LFL が内側線維束付着部の近くへ向かう横骨折線または短斜骨折線で、これ自体が主骨折線となる(新AO分類の31A3.2)。近位骨片は内反・後屈に回旋転位し、遠位骨片は内側へ転位するため、X線正面像で「逆L字型」を呈することが多い[8]
Type III(reverse oblique pattern): LFL が外側線維束付着部と内側線維束付着部の間を走る典型的な逆斜骨折で、これ自体が主骨折線である。遠位骨片は大きく内側へ転位するが、近位骨片は残った外側壁に外側広筋が付くため回旋転位が少ない[8]
Type II・III とも、小転子骨折があると遠位骨片の内側転位は小さい傾向がある。転子間線領域の骨折・小転子骨片・大転子後方骨片・両者が一塊になったバナナ骨片をさまざまに合併することがほとんどで、単純な2 parts 骨折は15%程度と報告されている[8]。
Type I と Type III はどちらも LFL と転子部骨折線の両方をもつことが多く、どちらが主骨折線かで振り分ける(転子部骨折線なら Type I、LFL なら Type III)。LFL が転子部骨折線に合流する点にできる山形骨折線の頂点が、Type I では高く、Type III では低い。この区別は治療戦略とインプラント選択を変える[8]。
整復の要点(Type I): Type I は、不安定型転子部骨折と同じく髄外整復を行う[8]。整復の目標は、側面像で前方の骨皮質同士を噛み合わせるか、近位骨片を軽度髄外型にすることである[6]。牽引手術台での整復で骨性コンタクトが得られなければ、術中に観血的整復を行う[5]。近位骨片の前方骨皮質が遠位骨片の髄内に入り込んでいる場合は、骨折部前方に小皮切を加えてエレバトリウムを挿入し、Kapandji 法の要領で整復する[6]。
整復位は側面像の生田分類(subtype A/N/P)で評価する。転位の形は腸骨大腿靱帯と骨折線の位置関係に左右され、骨折線が靱帯付着部より遠位にあれば subtype A、近位にあれば subtype P、付着部をまたぐ位置にあれば subtype N の形になる[7]。
Type II の整復: 股周囲筋の力の不均衡で強く転位するため、整復位の獲得と保持が難しい。近位骨片の内反は K-wire のジョイスティック操作と、外側から大転子をプッシャーで押すことで整え、遠位骨片の内側転位は単鈍鈎を骨幹部内側にかけて外側へ引き出して整える。整復ツールで整復位を保持したままインプラントを入れる[8]。
Type III の整復: 遠位骨片は大きく内側へ転位するが近位骨片の回旋転位は少なく、LFL も斜めのため、整復位の保持は Type II より容易である。手術が簡単に終わるかは、外側壁と骨幹部を安定した整復位に持ち込めるかにかかっている。外側からローマン鉗子やワイヤー(経皮的 MIPO パサーを通す)で整復固定するのが有効である。ただし LFL の走行によっては外側のスパイクが短く、鉗子やワイヤーのかかりが不十分になったり、ラグスクリューの挿入部と干渉したりする。鉗子やワイヤーで整復できないときは、プッシャーで外側壁を内側へ押して内反を整え、骨幹部を単鈍鈎で外側へ引き出してアライメントを得て、助手に保持させるか K-wire で仮固定する[8]。
Type I の整復位の評価(側面像)— 腸骨大腿靱帯の付着部と骨折線の位置で転位の形が決まる。付着部より遠位=髄外型(subtype A)/付着部をまたぐ=解剖型(subtype N)/付着部より近位=髄内型(subtype P)。目標は髄外型Type I で追加の整復が要るかの判断 — 側面像で前方骨皮質の噛み合い(骨性コンタクト)が得られているかで決める。目標は軽度髄外型(subtype A)Type II の整復 — ① K-wire のジョイスティック操作と ② 外側から大転子を押すプッシャーで近位骨片の内反を整え、③ 骨幹部内側にかけた単鈍鈎で遠位骨片を外側へ引き出すType III の整復 — 外側壁と骨幹部をワイヤーで整復固定してから髄内釘を入れる。a 整復前/b パサーを外側から通す/c ワイヤーで整復固定/d 髄内釘で固定
Type I: 髄外整復を行い、壊れた外側壁の代わり(a lateral prosthetic wall)を兼ねるショートネイルで固定する[8]
Type II: 術後も近位骨片に強い転位の力がかかるため、骨頭把持力の高い髄内釘を選ぶ。遠位骨片の固定のため、遠位径が太いか遠位横止めスクリューを2本使えるものが要るが、ロングネイルは要らない[8]
Type III: 転位の主座が遠位骨片(骨幹部)にあるため、ショートネイルでは遠位側の固定性に問題が生じ、転子下まで逆斜骨折が及ぶ場合はなおさらである。骨折部より遠位に占めるネイルの長さが要る。ロングネイルは大腿骨の前弯・外弯と合わないことがあり、ミドルネイルが有用である。主骨折線から遠位横止めスクリューまで5cm以上を確保する[8]
Buckley RE, Moran CG, Apivatthakakul T(編)(2018)AO Principles of Fracture Management(第3版). Thieme.(日本語版:AO法骨折治療 第3版、医学書院、2020) DOI: 10.1055/b-006-149767
Haidukewych GJ, Israel TA, Berry DJ(2001)Reverse obliquity fractures of the intertrochanteric region of the femur. J Bone Joint Surg Am, 83(5):643–50. PMID: 11379732
Baumgaertner MR et al.(1995)The value of the tip-apex distance in predicting failure of fixation of peritrochanteric fractures of the hip. J Bone Joint Surg Am, 77(7):1058–64. PMID: 7608228
塩田直史(2013)大腿骨転子部骨折(plating). Monthly Book Orthopaedics, 26(11)(特集「下肢骨折治療基本手技」):47–52.
正田悦朗(2013)大腿骨転子部骨折(nailing). Monthly Book Orthopaedics, 26(11)(特集「下肢骨折治療基本手技」):53–62.
山口正哉(2019)骨折治療基本手技アトラス~押さえておきたい10のプロジェクト~. 最上敦彦(編), p272(Monthly Book Orthopaedics誌30周年記念書籍). 全日本病院出版会. ISBN 978-4-86519-257-5